研究課題/領域番号 |
24700146
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
佐野 勝彦 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (20456809)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 中国 / ハイブリッド論理 / 様相論理 / 証明論 / エージェント通信 / チャネル |
研究概要 |
本研究には A) 時間次元を組み込んだ命令・許可による義務変化の形式化,B) エージェント間通信の多次元HLによる形式化,C) 多次元HLの証明論的研究,の3つの課題が存在した.当初の予定ではB)とC)の一部に取り組む予定であった.研究協力者である北陸先端科学技術大学院大学の東条敏教授との議論を通じて,研究課題B)の大きな進展が予想できたため,B)に集中的に取り組んだ.チャネル概念を組み込んだエージェント通信のための多次元ハイブリッド論理について論文を仕上げ,査読付き国際会議ICLA2013で発表を行った.その論文執筆プロセスで,一次元の様相論理においても同様の機能を実現する発想に気が付き,法学における「たぬき・むじな事件」を具体例に事実誤認を信念の論理を用いて分析した論文を仕上げ,国際ワークショップJURISIN2013に於いて発表を行った.また,動的認識論理に関して業績を挙げている西南大学(中国)の馬明輝氏をJAISTへ招いて,課題A), B) の両方に関わる基礎的研究を行った.具体的には,義務を様相演算子で捉えた場合,一般に「『Aが義務』かつ『Bが義務』から『A かつ B の両方が義務』」は不成立とみなされることがあるが,このような振舞をする演算子は非正規とよばれる.馬氏との共同研究では既存の公開告知論理を非正規な様相論理へと一般化し,研究課題 A), B) 両方の基盤を固めた.この研究成果については国際ワークショップLORI-IVへ投稿予定である.研究課題C)に関しては,余代数構造に対する一階述語論理に対するシークエント計算を提案,一部のケースに対してカット除去定理の成立を明らかにした.この一階述語論理は本課題の研究対象である,多次元ハイブリッド論理と論理学的技巧に共通点が多いため,次年度以降の課題C)の遂行に本成果で得た知見を活かす予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
.課題B)に関しては想定していた研究課題だけではなく,法学への応用を伴う研究成果を残すことができた.また,馬氏との共同研究を通じて次年度以降の課題 A), B) の遂行可能性を大きく高める基盤的研究を行うことができた.課題B)の進展の一方で,研究課題C)に費やす研究時間が結果的に少なくなり,交付申請書で予定をしていた課題に取り組むことができなかった.この点については次年度以降に補う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
上述の課題C)の多次元ハイブリッド論理の証明論に集中的に取り組む予定である.北陸先端科学技術大学院の情報科学研究科の東条研究室(執筆者の所属研究室)では,2013年7月から Academy of Finnland からの派遣で Jonni Virtema 氏を博士学生として受け入れる予定である(滞在費用は本科研費とは無関係).Virtema氏は上記の研究課題C)の多次元ハイブリッド論理の決定可能性の問題に興味を持っており,共同研究を行う予定である.多次元ハイブリッド論理の決定不可能性は,交付申請書では三年次に研究を行う予定であったが,前倒しして二年次に取り組む予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
申請書では昨年度に予定をしていたが実施できなかった計算機購入を今年度に行う予定である.また,昨年度の成果発表のための国内・国際学会への出張,及び,研究遂行に必要な書籍等の購入にも研究費を使用する予定である.
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