本研究では、ネットワーク越しのコミュニケーションにおける情報伝達の遅延問題に対し、ユーザのコミュニケーション動作をシステムが理解し、状況に応じた人間の操作を先取りすることで、適切な情報を伝える新たな手法を確立することにある。この課題に対し、「エージェント」を介した通信を行うことで変化する情報を考慮しながらユーザが行う操作を事前に予測し適切な状態を維持する手法が考えられる。エージェントは情報の選択と先見行動から予測される次の動作を決定し、遠隔地でのシステムの出力を決定する。その結果、ネットワークの遅延が生じた状況においても適切にコミュニケーションを継続することが可能となることが期待される。 上記の目的のためにまず人の情報入力特性を獲得する必要がある。人間の行動理念は、短期報酬を期待した反射行動、累積報酬を期待した予測行動、行動の収束性に関する3層構造で再現できると考えられる。簡易なゲームシステムをPC上に構築し人の操作特性を学習させたところ、2層までの階層モデルによる学習結果で人の操作特性をよく獲得できていることを確認した。また、学習したモデルが独立してゲームをこなすことができることが確認されたことから、人の特性を模倣したゲーム操作が獲得できており、一時的な時間遅れに対して、人の操作を代替することが可能であることが確認された。
|