言語や音楽がノイズにより一部かき消された場合にも、ヒトは無意識に失われた情報を補完し内容を理解することができる。これを聴覚的補完とよび、霊長類でのみしか存在が確認されていない。本研究では、聴覚生理学の標準モデル動物であるスナネズミを対象に、彼らが聴覚的補完の能力を持つのか、また補完には聴覚末梢の働きが関与するのかを検証した。行動実験の結果、ノイズで音がかき消された場合にも、スナネズミはノイズ中に音が継続すると知覚している可能性が示された。一方、蝸牛基底膜の応答からは聴覚的補完は観察されなかった。これにより、聴覚的補完の聴覚中枢機構をスナネズミを対象に研究することが可能になった。
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