研究課題/領域番号 |
24700162
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
高橋 桂太 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (30447437)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 画像情報処理 / 自由視点映像 |
研究概要 |
本研究は,ユーザが対象を観察する視点位置を自由にコントロールできる自由視点カメラ技術の基礎の確立を目指すものである.ハードウェア技術からのアプローチとして,カメラを移動機構に搭載して位置を制御することが考えられるが,それだけでは視点移動の自由度や柔軟性が極めて限定される.そこで本研究では,ソフトウェア技術からのアプローチとして,多眼カメラ画像の補間に基づく自由視点映像生成技術を組み合わせることを提案する. 平成24年度においては,研究代表者がこれまでに構築したリアルタイム自由視点画像生成技術を基盤に,多眼カメラが時々刻々と移動する条件下で自由視点映像を生成する技術を確立した.具体的には,対象とする実世界に対する多眼カメラの位置・方向を推定する自己座標推定技術を開発し,さらに,推定された自己位置情報に基づいて多眼カメラが移動中でも矛盾のない連続的な視点移動を実現する自由視点映像生成アルゴリズムを開発した.多眼カメラは既有設備を用い,多眼カメラを手に持って動かしながら実験を行い,開発した技術の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実施計画に基づいて研究を実施し,予定通りの成果を得た.多眼カメラの自己座標推定の手段としては,追加のハードウェアが不要なアプローチとして,まずは,多眼カメラから取得される画像そのものを用いるビジョンベースの座標推定を採用した.具体的には,画像から自動的に抽出できる自然特徴点を,視点間および時刻間で対応付け,その移動の軌跡から多眼カメラの自己位置の変化を推定するアルゴリズムを構築し,実際の装置を用いて約10fpsの速度でのオンライン処理に成功した.また,カメラの自己位置の変化を補償するように,自由視点映像を生成する仮想視点の位置をコントロールする,擬似的なstabilization手法も実装した.これによって,多眼カメラが時々刻々と移動する状況での自由視点映像生成が達成された.これらの成果は,平成24年度中に,国内の学会で口頭発表するとともに,研究速報として国内の査読付き論文誌に投稿した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に得られた結果をもとにして,ソフトウェア(自由視点映像生成技術)とハードウェア(多眼カメラの移動)と組み合わせた自由視点カメラ技術の基礎の確立をめざす. 平成25年度には,多眼カメラを移動機構の上に搭載し,ソフトウェアによる自由視点映像生成と,ハードウェアによる多眼カメラの移動を組み合わせた自由視点カメラ技術のプロトタイプを構築する.実験用の移動機構として,X軸ステージのような,可動範囲が限定されていても,精密な制御が可能なものを用い,基礎的な知見を得ることを目指す.具体的な制御方式は以下のようになる.多眼カメラは,空間を満たす光線を切り取る「窓」に相当する.ユーザの観察視点が「窓」の端に寄って来た場合には,観察視点が「窓」の中央付近に来るように多眼カメラを移動すれば,ユーザの視野が窓から外れるのを防ぐことができる. 平成26年度には,自由視点カメラ技術のプロトタイプの仕上げとして,ソフトウェアとハードウェアのより高度な融合に取り組む.移動機構の制御には,必然的に応答遅延や速度の揺らぎが発生するが,これらの要因が,ユーザの観察する自由視点映像に悪影響を及ぼさないようにしたい.観察される映像が不必要に揺らいだり,不連続に飛んだりしないようにするために,ハードウェアの特性を補償するように,ソフトウェア的に観察視点を制御し,滑らかな視点移動を実現する技術の開発に取り組む.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には,物品費として,多眼カメラを搭載するための移動機構を購入を予定している.また,最新の研究動向の調査および研究成果の発表のため,国内・海外の学会への参加を予定している.これらの予定に柔軟に対応するため,平成24年度の支出を抑え,平成25年度により多くの研究費を使えるようにした.
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