研究課題/領域番号 |
24700163
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
鷲沢 嘉一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (10419880)
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キーワード | 脳信号処理 / パターン識別 / 機械学習 / 脳コンピュータインターフェース / 事象関連脱同期 |
研究概要 |
Grassmann多様体上のMahalanobis距離及び拡張Grassmann多様体上のMahalanobis距離について,論文にまとめ投稿を行った.d次元空間からr次元(r<d)空間への正射影行列の集合と同相であるGrassmann多様体の概念を拡張し,[0,1]の固有値を持つ対称行列としてパターンを表現することにより,Grassmann多様体で表現していたパターンの変動を柔軟に表現できるようになった.これにより,3次元物体識別や脳信号判別問題において従来法よりも高い識別精度を示した. 提案法を脳信号識別問題へ応用した.脳コンピュータインターフェースの動作原理の一つである事象関連脱同期現象を脳波計を用いて観測し,状態判別を行う際に共空間パターン(common spatial potential, CSP)法及びその拡張手法が用いられる.共空間パターン法は,脳波パターンをEuclid空間へ埋め込む際に情報の欠落が生じる.Grassmann多様体および拡張Grassmann多様体の概念を用いることで,Euclid空間へパターンを埋め込まず,分散共分散構造のままパターン同士の距離を評価することができる.公開ベンチマークセットを用いた実験では,CSP法やその拡張手法よりもGrassmann多様体および拡張Grassmann多様体を用いる手法の方が高い識別率を示した. この他,応用研究として,新しい視覚刺激を用いたBCIシステムの開発を行った.従来のBCIシステムであるP300spellerでは,P300と呼ばれる視覚刺激反応を用いて脳信号の判別を行っていたが,提案法ではP300に加えてN100と呼ばれる視覚刺激反応を合わせて用いることで,従来法よりも高速で精度の高いBCIシステムを実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Grassmann多様体上のMahalanobis距離及び拡張Grassmann多様体上のMahalanobis距離について,論文にまとめ投稿を行い,採録された.また,今後の研究の見通しもついている.
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今後の研究の推進方策 |
共空間パターン法には数多くの拡張が存在する.Grassmann多様体および拡張Grassmann多様体を共空間パターン法と組み合わせるだけでなく,各種の拡張手法を取り入れ,性能を検証する必要がある. Grassmann多様体および拡張Grassmann多様体に類似する手法に相互部分空間法がある.相互部分空間法は,サポートベクタマシンなどに用いられているカーネル法と組み合わせることにより精度が大幅に向上することが示されている.提案法も相互部分空間法と同様にカーネル法を適用することで性能向上できると考えられるため,これらの理論構築を行う.また,カーネル関数を設定する際に,多カーネル法と呼ばれる手法で関数のパラメータを学習する手法もある.これらの手法を取り込むことも検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
少額のため,使い切るよりも次年度に繰り越した方が効果的に予算執行できると判断したため. 消耗品などに充てる
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