研究課題/領域番号 |
24700174
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田中 豪 名古屋市立大学, その他の研究科, 講師 (30609805)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 色覚バリアフリー / 多原色ディスプレイ |
研究概要 |
異常色覚を有する人は、特定の組合せの色を見分けにくく、表示された画像の内容把握が困難な場合がある。画像の色を変更することで異常色覚でも見分けやすい配色にできるが、その場合、正常色覚では奇妙な配色となることがある。本研究では、多原色ディスプレイという新しい表示ディバイスを活用した色覚バリアフリー画像表示システムの実現を目的とする。 本研究では、正常色覚において同じ色に見え、異常色覚において異なる色に見える光刺激対を構成することが重要である。このような光刺激対を構成できれば、正常色覚者の見え方は変化させずに異常色覚者の見えを改善できるからである。平成24年度は、そのような状況を作り出すことができるかについて検討した。多原色ディスプレイとして、シャープ株式会社の「クアトロン」を用いて実験を行った。 正常色覚者と異常色覚者(異常3色覚者)では、同じ光刺激に対する錐体の反応値が異なる。したがって、錐体の反応以降の脳の処理が正常色覚者と異常色覚者で同じであると仮定すれば、理論的には目的とする光刺激対を作ることができる。ただし、作ることのできる光刺激対の異常色覚における色差はわずかなものであったので、これを用いた色覚バリアフリー画像表示の実現は難しいものと思われる。 一方、多原色ディスプレイの特長としては、色域が広いことも挙げられる。こちらの能力を活かした色覚バリアフリー画像表示も考えられる。この場合は、正常色覚における異なる色を異常色覚においても異なるように見せるための色変換が必要である。その要素技術についての研究も行った。具体的には、色の組合せに関する最適化問題を解くことになるが、これについて従来の手法を改良した手法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正常色覚者には同じ色に見え、異常色覚者には異なる色に見える光刺激対の作成について、「錐体の反応以降の脳の処理が正常色覚者と異常色覚者で同じである」という仮定の下では理論的に可能である。しかし、その光刺激対について、クアトロン上で作成される異常色覚における色差は、期待したほど大きくなかった。ただし、まだ、検討は途中段階であるので引き続き目的とする光刺激対の作成について考えたい。 一方、広色域であることを活かした色覚バリアフリー色変換については、要素技術について一定の成果が得られた。ただし、広色域であることを積極的に使用したアルゴリズムの構築には至っていない。 以上を総合して、現在までの達成度は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
正常色覚者には同じ色に見え、異常色覚者には異なる色に見える光刺激対の作成について検討を続ける。一方、今年度は、多原色ディスプレイは広色域であるという点を活かした色覚バリアフリー色変換について注力するようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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