研究課題
異常色覚を有する人は、特定の組合せの色を見分けにくく、表示された画像の内容把握が困難な場合がある。画像の色を変更することで異常色覚でも見分けやすい配色にできるが、その場合、正常色覚では奇妙な配色となることがある。本研究では、多原色ディスプレイという新しい表示ディバイスを活用した色覚バリアフリー画像表示システムの実現を当初の目的とした。本研究では、正常色覚において同じ色に見え、異常色覚において異なる色に見える光刺激対を構成することが重要である。このような光刺激対を構成できれば、正常色覚者の見え方は変化させずに異常色覚者の見えを改善できるからである。そのような状況を作り出すことができるかについて検討した。正常色覚者と異常色覚者(異常3色覚者)では、同じ光刺激に対する錐体の反応値が異なる。したがって、錐体の反応以降の脳の処理が正常色覚者と異常色覚者で同じであると仮定すれば、理論的には目的とする光刺激対を作ることができる。ただし、作ることのできる光刺激対の異常色覚における色差はわずかなものであったので、これを用いた色覚バリアフリー画像表示の実現は難しいものと思われた。一方、多原色ディスプレイの特長としては、色域が広いことも挙げられる。こちらの能力を活かした色覚バリアフリー画像表示も考えられる。この場合は、正常色覚における異なる色を異常色覚においても異なるように見せるための色変換が必要である。その要素技術(カラー画像のモノクロ変換)についての研究も行った。具体的には、色の組合せに関する最適化問題を解くことになるが、これについて従来の手法を改良した手法を提案した。また、新規なモノクロ変換手法、並びにそれを応用した色覚バリアフリー色変換手法も提案した。
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Optical Review
巻: Vol.21, No.2 ページ: pp.127-134, 2014