研究課題/領域番号 |
24700192
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡本 正吾 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10579064)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | インビテーション / 視覚 / 触感 / 触覚 |
研究概要 |
1) 触れてみたくなる素材の設計方法の確立 心理学実験をもとに、触れてみたくなる素材表面を設計する方法を確立した。この手法は、素材を構成する物理因子が数種類から10種類程度に限定されている場合に特に有効である。表面の物理因子(表面粗さ・光沢など)を制御し、物理因子と触れてみたさの関係性を得た。この実験結果に重回帰分析を適用し、素材の種類と、物理因子の組合せから、誘引の度合を設計可能な関係式を決定した。 2) 触れてみたさの度合を表わす指標の開発と計測方法の確立 正規化順位法により、触れてみたさの度合いを表す指標を開発し、その妥当性を検証した。実験参加者は多数のテクスチャを触れてみたいと感じる順に並べた。この順位に正規化順位法を適用し、順位尺度から間隔尺度を構成した。指標の繰り返し再現性および収束妥当性を確認したため、今後の研究で用いられる標準的な指標となる。 3) 触れてみたくなる素材への触れ方の観察と、素材と触れ方の確率関係モデルの構築 人がついつい素材の表面に触れてしまうときに、素材によってその触れ方が異なることを明らかにした。この触れ方の違いが、ハプティック・インビテーション(ついつい触れてしまう現象)を理解するうえで重要である。素材の触感と誘引される触れ方の因果関係が不明であるため、人の行動量と素材の触感の関係の確率モデルを構築し、両者の確率的関係を特定した。人の行動量として,手のアプローチ速度(カメラで計測)、なでる・押す・擦るなどの触れ方(力センサにて計測・分類)を測定・観察した。素材の触感の特徴量は官能評価によって測定した。得られたデータから、ベイジアン・ネットワークを構築し、その結果、素材の触感によって、誘引される触れ方の傾向が異なることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた課題は達成され、次年度の課題を一部先行して実践している。 1) 「触れてみたくなる素材の設計方法の確立」課題に関しては、素材の物理量および、触感の特徴量から、触れてみたくなるような素材を設計する方法論を提案し、その有効性を確認できた。 2) 「触れてみたさの度合を表わす指標の開発と計測方法の確立」課題に関しては、アンケートなどの時間が掛かる方法ではなく、順位付けという、参加者に負担の掛からない方法にて、繰り返し再現性の高い指標を開発することができた。 3) 「触れてみたくなる素材への触れ方の観察と、素材と触れ方の確率関係モデルの構築」課題に関しては、構築された確率関係モデルから、素材への触れ方と、素材の触感特徴の確率的偏りが顕著に確認された。これは、素材の触感によって誘引される触れ方が異なるという仮説を支持するものである。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題に大きな変更はない。初年度の研究成果より、研究の前提となる仮説の妥当性が支持されたため、次年度の課題は、予定通り遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品として、視線計測装置の購入を予定している。これは、人がついつい素材の表面に触れてしまうときの、行動量として、視線を計測するためである。消耗品の他には、研究発表として学会参加に掛かる費用および、論文投稿に掛かる費用を計画している。心理学実験を予定しているため、参加者への謝礼も支出する。
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