研究課題/領域番号 |
24700201
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
多田 充徳 独立行政法人産業技術総合研究所, デジタルヒューマン工学研究センター, 研究チーム長 (70392628)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 筋骨格モデル / モーメントアーム / 伸筋腱 |
研究概要 |
繊細な手指の機能は複雑な筋腱ネットワークから生み出される.特に手指の伸展機構に関しては,伸筋腱が基節骨の背側で中央索と2本の側索に分岐すると同時に,これら3本の索に撓側と尺側から伸びる手内筋腱が接続するなど,屈筋腱の走行に比して極めて複雑な構造を持つ.本年度は,この複雑な腱構造の相互作用に着眼し,内在筋腱の張力が外在伸筋腱の走行や張力に与える影響を明らかにするための腱骨格モデルを物理シミュレーションエンジン上に構築した.また,この筋骨格モデルを用いて,腱の走行がモーメント長の変化に与える影響を推定するための予備的な数値シミュレーションを実施した.基本的に腱とは繊維質の束である.このため,曲げ方向に比べて引張り方向の剛性が高いという機械的な特性を有する.本モデルでもこの特性を忠実に再現できるように,曲げ方向には抵抗なく屈曲するが,引張り方向には伸展することがない仮想的な紐状エレメントを用いて腱を再現した.初期状態における腱の走行については,医用画像や解剖写真などを参考に決定した.具体的には,中央索と側索の分岐構造を中心に,2本の伸筋腱と2本の屈筋腱(外在勤腱),そして3本の手内筋腱(内在筋腱)を持つ構造とした.ただし,指背腱膜については腱モデルに含めていない.腱構造の相互作用(腱張力の伝達や,分岐部における張力の分配など)については物理シミュレーションエンジンを用いて計算できるようにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
物理シミュレーションエンジンの収束安定性と干渉判定に問題があり,モーメントアーム長の変化を推定するための大規模な数値シミュレーションを実施できなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
筋腱ネットワークに複合的な筋腱張力が加わる状況下での外在伸筋腱のモーメントアーム長の変化を,平成24年度に構築した腱モデルを用いて予測できるようにする.予測した外在伸筋腱のモーメントアーム長を用いて,与えられた指先力を実現し得る複数の筋腱張力パタンを計算する.そして,実際の表面筋電位パタンと比較することで,尤もらしい筋腱張力パタンを推定し,筋腱張力推定問題のための新たな拘束条件を実験的に定式化する.
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次年度の研究費の使用計画 |
現在使用している物理シミュレーションエンジンの安定性が向上しない場合には,商用の物理シミュレーションエンジンの導入を検討する.それ以外の使途については当初の研究計画に従う.
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