研究課題/領域番号 |
24700202
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
佐々木 智典 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, その他部局等, 研究員 (30587126)
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キーワード | 手 / ディジタルヒューマンモデル / ディジタルハンド / モデリング / 画像計測 |
研究概要 |
平成25年度においては, (1) 皮膚等の柔軟な構造を含むディジタルハンドの改善, (2) 実際の手の皮膚の変形を観測するための画像処理ソフトウェアの改善,(3) 手の把持を伴わない器用な操作における力学的条件に関する検討に取り組んだ。 (1)については,前年度までに作成したディジタルハンドを基に,解剖学の知見を参照して柔軟な構造を含むディジタルハンドのプロトタイプを複数作成し,実際の手の近似の程度や,シミュレーション上の実行効率とのトレードオフの観点で改善に取り組んだ。これは手の運動データを基にディジタルハンドを動作させることで,直接的には測定困難な接触力等の評価を行うことを目指すものである。 (2)については,前年度までに作成した画像処理ソフトウェアの改善に取り組み,並列計算ハードウェア(GPU)での計算による高速化についても検討した。これは,相対的な評価ではあるものの実際の手の皮膚の変形の度合を高速度カメラの撮影映像に基づいて推定するものであり,実際の手を模擬するディジタルハンドの作成に寄与するものである。 (3)についてはディジタルハンドにより,実際の手の運動においては測定困難な接触力等を推定・評価するためにシミュレーション上での運動学・力学的なデータの収集に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記【研究実績の概要】の項に示したディジタルハンドの改善は原理的な観点では進展しており,記録済みの手の運動データを基にディジタルハンドを動作させるシミュレーションの用途については差支えなく使用可能である。一方,実行速度の観点では,手の姿勢を計測しながらのリアルタイムのシミュレーションには現状の実装では不十分な点があり,改善の必要がある。これにはシミュレーション上の物理計算およびグラフィクス処理の両方の影響があり,並列計算の導入による改善を見込んでいる。 また,器用な操作における力学的な条件の検討については,ディジタルハンドでのシミュレーションや高速度映像に対する画像処理による運動に関連する接触力等のデータの収集を行うシステムの開発は進展している。一方,これらの運動に関連するデータを適切に要約し,器用な操作を達成するための原理的な観点での力学的条件を見出すには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
上記【現在までの達成度】の項に示した各課題について解決を図り,器用な操作を行うための力学的条件を見出すべく研究を進める。ディジタルハンドの改善については,並列計算ハードウェア(GPU)の利用等によりシミュレーションの実行速度を高めることに取り組み,かつ,手動作の高速度映像の画像処理等から得られる実際の手の特徴を取り込むことを目指す。シミュレーション実行速度の大幅な改善には困難が見込まれるため,近似の程度を高めるなどの方策を検討しつつ,手の器用な操作の解析のための本質を損なわずにディジタルハンドのシミュレーションが行えるように改善を行う。 また,ディジタルハンドの改善に取り組みつつ,これを利用した器用な操作における力学的データの収集を継続し,器用な操作を達成するための力学的条件を明らかにすることを目指す。このために,収集したデータを活用すべく,データ処理や接触力等の視覚的な表現の工夫についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究費のうちに次年度使用額が生じた理由は次のようになる。画像処理のためのワークステーション等の購入を検討していたものの,ソフトウェアの実行速度が改善される程度などを含めて,仕様を再度検討なおす必要が生じたことから次年度以降に購入することとしたため,この分の支出を平成25年度中には行わなかった。 平成26年度においては,上記のワークステーションの他,既存の人体形状の3次元データ,これに関わるソフトウェア等に関する支出を検討している。また,投稿中・投稿予定の国内・国際会議への参加のための旅費支出を計画している。
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