研究課題/領域番号 |
24700203
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
野田 智之 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 専任研究員 (30588661)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | パワーアシストロボット / 生体信号 / HRI |
研究概要 |
ヒト-ロボット間の相互作用を考慮した運動意図の抽出を行うための、シミュレーションおよび実機によるデータ取得・解析を行った。関連研究では筋電位に基づくトルク制御のフィードバックにおいて、そもそも、ヒト-ロボット間の相互作用を考慮していないことがわかり、これを考慮したトルクフィードバックに注目し手法を構築した。ヒト-ロボット間相互作用を伴う動的な運動として上肢の運動タスクを想定し、このタスクを脳活動・筋電位によって1自由度の外骨格型ロボットで実時間アシスト実験を行った。ここで、特に筋電位フィードバックの際に、現状のアシスト量により筋電位信号が減少することに注目し、筋電位から推定したトルクをアシスト量に応じて調整することをコンセプトとした。 まず、ヒト-ロボット間の相互作用を考慮したアシストをシミュレーションし、手法の妥当性を検証した。さらに、上記の実時間アシストが行えるシステムを構築し、従来手法と提案手法の比較を行うことで、提案手法がヒト-ロボット間の相互作用が安定化できることを確かめた。これまで、ヒト-ロボット間の相互作用を考慮した生体信号のフィードバックが行われておらず、これを考慮するフィードバック手法を提案するとともに、実機においてアシストが安定化されることを示したことは非常に重要な成果である。さらに、脳活動を脳波計により計測し、センサのマップ上において隣接するセンサとの差異と相関に注目した情報処理を行い、これを実時間処理してフィードバックすることで運動アシストを行うことが可能になってきている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の最終的な成果目標は、ヒト-ロボット間の相互作用の局在性に注目することで、外骨格型ロボットの制御フィードバックに相互作用の影響を組み込んだシステムを構築し、ヒトの運動アシストを安心・安全かつスムーズに行うことである。本年度は主に手法を構築するためのデータセットの取得と相互作用を考慮したシミュレーションを行うことで、次年度以降に予定している解析を行う計画であった。今年度は、ヒト-ロボット間の相互作用を考慮したシミュレーションと、動的な運動中の生体信号を含むデータセットを取得する実験を行った。これらの実験データに基づき、脳波・筋電を信号処理して実時間フィードバックするためのパラメータの学習と、そのパラメータに基づき実際のシステムにおいてアシスト装置を構築できた点で、最終年度までの成果目標の一部を既に達成した。ただし、この成果は、非常に単純化された外骨格型ロボットでの実験に限定されている点、フィードバックにおけるセンサマップの利用が限定的である点、およびデータch数が十分でない点が課題であり、これらの点を次年度以降に手法の改良を検討する必要がある。しかし、脳波・筋電を使った生体信号フィードバック手法は国内および国際会議で発表し高い評価を得ており、これら成果は特許出願にも繋がった。これらは上記のような課題を上回る成果であるといえ、総合的に判定すると当初の計画以上に研究が進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、1関節の外骨格型ロボットにおいて、脳波および筋電位フィードバックを行うための基本インタフェースが構築できており、アシストシステムにおけるソフトウェア的な開発は当初の計画よりかなり進んでいる。今後はこのインタフェース部分をさらに改良を進めることで研究を円滑に推進することが期待できる。インタフェース部分の、特にヒト-ロボット間の相互作用を考慮したフィードバック手法に関する成果が、当初の予定以上に進んでおり、これらに関係するアイディアを必要十分な最小のシステムで実験・解析した。これらの成果は優先的に国内・国際学会で発表できただけでなく、特許出願へつなげることができた。しかし、その分、多チャンネルの生体信号センサシステムの構築が予定より若干遅れており、センサシステムの構築のための予算の繰り越しが必要であった。このような背景を考慮して、次年度ではセンサシステムの強化を行う。このシステム強化によりフィードバックにおけるセンサマップの利用が限定的である点とデータch数が十分でない課題について改善できる。さらにこれまでの研究成果を、村山医療センターという医療機関においてディスカッションしたところ、既に行っている生体信号のフィードバックにおける安定性を向上させることが、実用化に際して非常に重要だということが判明した。よって、安定性や安全性を重要視して手法の改良および構築を行う。具体的には多チャンネルのセンサシステムの安定性の問題を解決できるコンセプトを手法に組み込む。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降には 、本研究による基本的なコンセプトに関して、これまでに得られた成果内容を国内および国際会議で発表し、ディスカッションを通じて多くの研究者の意見を取り入れ、手法の改良につなげる。そしてこれを最終的には学術論文にまとめる。そのため、学会発表に関する予算として出張費用を支出することを予定している。また、生体信号を多チャンネルに取得できるシステムの試作を行い、運動アシストを行う実験をさらに推進する。具体的には、特に筋電位を多チャンネルで計測することを目標とし、システム構築を行うことで実際の使用場面を想定した実験を行う。これらにより、センサの中間的な表現が有効に働くようなデータセットを取得し、今後の解析につなげる。特に、センサシステムの安定性に関しては、実際に多チャンネルの計測システムにおいて不安定性がどのように発生するかを検証する必要があるため、計測システムおよびセンサシステムの拡張が最優先である。しかし、これらのシステムの試作には長い時間と多くの費用が必要となる。そのため、これらの研究を推進するのに必要な計測装置を作成する際に、近年急速に技術革新が起こっている3Dプリンタを利用することを想定し、その消耗品などを購入する。また、 外骨格型ロボットのシステムを改良するための部品を作製するためのCNCを制御するためのPCおよび解析やデータベース構築のためのPCが必要となる。これらに関連する物品費を計上するとともに、実験などで必要な謝金などの支出を予定する。
|