研究課題/領域番号 |
24700203
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
野田 智之 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 専任研究員 (30588661)
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キーワード | 知能ロボット / パワーアシストロボット / 生体信号 |
研究概要 |
本年度はセンサのトポロジマップを、センサフィードバック制御に有用な情報の中間表現として利用するものである。本年度は、生体信号のうち、特に筋電位情報に注目した。筋電位情報のタスクとして、筋電位に基づくトルク推定を行い、ロボットを力制御することを考える。ここで、筋電位情報の相互相関に基づき、センサのトポロジマップを作成する。トポロジマップには、筋の発生力に関する情報に加えて、筋の情報の構造に関する情報が含まれており、例えば筋電位計が断線やショートなど、異常が起こったような場合は、この構造が変化することになる。構造の変化を変化点検出として捉えれば、異常検出が可能である。これに加えて、異常検出されたセンサノードの重みを下げることにより、制御器が暴走したり機能しなくなることを防止することができる。これまでの筋電位信号の異常検出に関する研究はいずれも1つのセンサノードに注目していたため、その検出には長期観測が必要で、検出精度も低くなってしまっていた。本研究では、異常検出にセンサの相互相関に基づくトポロジマップを利用することで、相互作用によるセンサ欠損などの異常をリアルタイムに検出することを可能にした。実際に外骨格型ロボットを筋電位信号から推定したトルクにより力制御するシステムによる基礎実験により、上記手法が有効に機能し、実際にセンサ欠損がおこった場合もこれをリアルタイムに検出でき、一時的な変動はあるものの力制御が継続して機能することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、外骨格型ロボットのアシスト制御のため、生体信号のデータベース化を主に進める予定であった。実験システムの構築・データ取得は順調に進んでいる。この実験中に問題となっていたセンサ欠損に関して、改善に取り組んだところ、想定以上の成果を得ることができた。具体的には、本研究のコンセプトに基づき相互相関の変動を捉える手法を実装したところ、センサの欠損があっても制御機能が破綻しないシステムが構築でき、この成果をもって学術論文として投稿予定である。本研究の仮説の有用性が一部、検証できたことに加え、実用性の高い制御システムが構築できたことは、当初の計画以上の研究の進展である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに取得してきた外骨格型ロボットによるアシスト制御における生体信号のデータベースに基づき、センサフィードバック制御系の構築を予定どおり進める。この時、平成24年度において既に分かっている「アシスト量の調整の問題」を再検討し、ヒト-ロボット間の相互作用を考慮したアシストを実現する。 さらに平成25年度の研究において新たに得られたセンサ欠損への応用も同時に進めることで、より安心・安全なアシスト制御システムの構築が可能となる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に予定していた筋電位信号に基づく外骨格型ロボットの制御に関する実験をまず内部の被験者によって行ったところ、想定以上の成果が得られたため、引き続き外部被験者による実験を行う必要がなくなり、支払う予定であった、被験者謝金の支出がなくなったためである。本年度に行った実験は本研究で目的とする仮説の検証実験の一部とする予定であったが、関連論文の調査の結果、この実験結果のみでも学術的な価値が高く、新規性が高いことがわかった。これらを踏まえ、速やかに学会論文として投稿する準備を進めた。被験者実験は平成26年度に引き続き行うが、既に仮説検証用のデータは取得できており研究計画には全く支障はない。 これまでの生体信号を用いた実験において、生体信号の電極が欠損することが特に問題となることがわかり、本研究のコンセプトに基づき欠損の問題に対応することで、ロバストな外骨格型ロボット制御が可能となった。センサ欠損を扱う手法をさらに発展させるために、検出手法をさらに発展させるための実験システム構築を行うために必要な電子部品や計測用PCの購入、および実験のために必要な計測用消耗品などの購入を予定している。さらに生体信号を含むデータベースの構築により、これらの手法が生かせる多チャンネル情報処理システムの構築およびフィードバックシステムの構築を予定どおりに進める。
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