研究課題/領域番号 |
24700206
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
永井 岳大 山形大学, 理工学研究科, 准教授 (40549036)
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キーワード | 色覚 / 心理物理学 / 色彩科学 |
研究概要 |
平成25年度は、平成24年度に色覚情報処理の解明に有効であることが示されたClassification Image法(以下CI法)を活用し、脳内における色情報処理の検討を行った。はじめに、様々な色表現モデルを持つ仮想被験者の色知覚応答をCI法により区別できることをシミュレーションにより確認し、本研究課題のアプローチの妥当性を再確認した。続いて、心理物理実験において、白色中心の色分布や有彩色中心の色分布といった様々な色分布を持つ多色テクスチャノイズ中に単色四角形を埋め込んだ刺激を被験者に見せ、被験者には単色四角形の存在の知覚的な有無を応答してもらった。被験者の応答はノイズ中の色成分により変化するため、被験者応答とノイズ色成分の関係性を脳内色表現モデルに基づくCI法により解析した。その結果、1. 反対色表現モデル(赤緑チャネルと青緑チャネルで構成されるモデル)と多色表現モデル(様々な色相を表現する多数のチャネルにより構成されるモデル)では被験者応答の再現性に大きな違いが見られないこと、2. 多色表現モデルの場合、各チャネルの色相選択性が広い(単一チャネルが多くの色相に応答する)方が被験者応答をより良く再現できることが示された。これらの結果から、少なくとも被験者の色知覚を再現するためには、比較的広い色相に感度を持つメカニズムの存在が必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度以降の計画として、「項目2:CI データへの従来色表現モデルの適用性検討」と「項目3:提案手法に基づく新たな高次色表現数理モデルの構築」を掲げていた。項目2については、従来の色表現モデルである反対色表現モデルと多色表現モデルのどちらも同程度妥当であることを示したことで、達成されている。項目3については、被験者応答に必要な色表現チャネルの色相選択性が広い方が良いという新たな知見が得られていることから、新たな数理モデル構築へ向けた足がかりを得ているといえる。以上より、計画通り順調に研究が進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度においては、色情報表現の数理モデル構築とその妥当性評価を目的とする。第一に、心理物理実験データの解析を進める。具体的には、色表現チャネル数と被験者応答再現性の関係の更なる追求、広い色相性選択性を持つチャネルと狭い色相選択性を持つチャネルを組み合わせることの有効性を検証する。第二に、これまでの実験解析から得られた知見の一般性を検証するため、これまでと異なる多色テクスチャノイズを使用した心理物理実験を行い、CI法により再解析する。これにより、数理モデル構築に必要な知見をより強固なものにできると期待される。最後に、数理モデル構築における仮定検証のため古典的心理物理実験を並行して行う。具体的には、従来の色表現モデルでは常に白色を基準としたチャネルを仮定しているが、この仮定の妥当性を検証するため、色順応や色対比を効果的に活用して色空間内の白色を移動させた際の仮定妥当性を検討する。これらの実験的知見を総合的に取り入れることにより、色表現の数理モデル構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
多色テクスチャノイズ刺激を用いる心理物理実験においては、テクスチャ内の個々のパッチの色情報の統制厳密性よりも、テクスチャ全体としての色分布の方が結果に与える影響が遥かに大きいため、分光放射輝度計や視覚刺激生成装置などの色情報統制のための高額機器を導入していないことが大きな原因である。また、研究室内の学生に被験者として参加してもらっており、被験者謝金が発生しなかったことも原因である。 H26年度は厳密な色情報統制が必要な単一色パッチを刺激として用いる古典的心理物理実験を行うため、上記高額機器を導入する予定である。
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