本研究は、心理物理実験と逆相関法を組み合わせたClassification Image法(以下、CI法)により、脳内における色情報表現の数理モデルを構築することを目的とした。 H24年度には本研究方針が有効であるかどうかの確認として、CI法が成立するために必要なノイズのランダム性による色知覚変化が生じることを示し、さらにその色知覚変化を引き起こす上で適切な刺激パラメータ選定を行った。 H25年度には、CI法を活用し、脳内色情報表現を検討した。心理物理実験において、白色中心や有彩色中心など様々な色分布を持つ多色テクスチャノイズ中に単色四角形を埋め込んだ刺激を被験者に見せ、被験者には単色四角形が知覚可能か否かを多数回応答してもらった。その被験者応答は脳内色表現モデルに基づくCI法により解析された。その結果、1. 反対色表現モデル(赤緑チャネルと青黄チャネルで構成されるモデル)と多色表現モデル(様々な色相を表現する多数のチャネルにより構成されるモデル)では被験者応答の再現性に大きな違いがないこと、2. 多色表現モデルの場合、各チャネルの色相選択性が広い(単一チャネルが多くの色相に応答する)方が被験者応答をより良く再現できることが示された。これらの結果から、被験者の色知覚に関与するのは、比較低次な反対色表現あるいは色相選択性が広いメカニズムによる色表現であることを示唆した。 最終年度であるH26年度には、脳内に複数の異なる色表現が存在することを示すため、同一被験者に対し異なる色判断課題を行わせたときの色度特性を測定した。具体的には、全く同じ空間・色構成を持つ視覚刺激に対し、色弁別課題を課したときと閾上色差判断課題を課した場合の色度特性を比較した。その結果、それらの課題から得られる色度特性が大きく乖離し、色弁別と閾上の色差判断では異なる色情報表現が関与していることを明らかにした。
|