研究課題/領域番号 |
24700207
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
秋山 庸子 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50452470)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 感性重視型材料 / 触感 / 微構造 / 水 |
研究概要 |
本研究では,要求された触感を正確に再現するための分子レベルでの材料設計手法の確立を目的として,人が日常的に触れる,繊維,化粧品,紙,皮革,木材等の材料を共通した見方で解釈できる材料中の水の挙動に着目し,その静的,動的な挙動と触感の関係を明らかにすることで,分子レベルで触感設計を行うことを目的とする。 まず,H21-22の若手研究(B)で官能評価の主因子と材料の物理量との相間について検討を行った結果を基礎とし,化粧水の「さっぱり感」,「しっとり感」等についての触感設計を行った。はじめに,官能評価の因子分析によって得られた主因子に対応することが確認された複数の物理量と,水分を保持する保湿成分,水分蒸散を促す清涼成分のそれぞれの比率との相関を確認した。この結果を元に,「さっぱり」,「しっとり」および「べたつき」の触感の官能値の目標値を決めて,特定の触感を引き起こす化粧水の設計を行い,代表的な保湿成分であるグリセリン,および代表的な清涼成分であるエタノールを用いて,モデル化粧水を調製した。設計の妥当性は複数の被験者によるモデル化粧水の官能評価によって行った。その結果,目標とする官能値と実際に評価した官能値は類似した傾向を示し,本手法による材料の触感設計の妥当性が示された。 さらに,本手法がスキンケア製品に限らずヘアケア製品や繊維製品など幅広い材料において適用できるかどうかを調べた。特に水分が大きく関係すると思われる繊維(タオル)の使用感については,特に皮膚上の水分を拭き取る際の使用感に着目し,官能評価結果から抽出された主因子と,材料物性との相関を見ることで,それぞれに対応する物理量の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では,触感の主因子の抽出とそれに対応する物理量の特定と,触感に関連する物理量と材料中の水の挙動の関係の解明(静的検討)を行う予定であった。 まず触感の主因子の抽出とそれに対応する物理量の特定については,材料の触感に関する官能評価結果について,これまでの触感に関する研究により構築した手法を用い,触感の物理的因子を抽出した。まず,因子分析を行っていくつかの主因子を求め,それぞれに対応する物理量の検討を行った。因子分析によって抽出されたいくつかの因子に関して,材料物性(粘弾性,表面摩擦特性,密度など)との相関を検討し,物理量と各主因子,さらには各官能評価項目と物理量との関係式を求めた。1つの物理量で説明できない場合がほとんどであったため,重回帰分析により複数の物理量の線形結合によって,触感の官能値を表すことに成功した。 また触感に関連する物理量と材料中の水の挙動の関係の解明(静的検討)については,材料の「粘性感」にぬれ性が関与していることに着目し,化粧水を対象に,保湿成分と清涼成分の組成と接触角や皮膚を模擬した基板上での粘性率との関係を明らかにすることで,目的とする触感を引き起こす2種のモデル化粧水の調製を行った。官能評価による触感設計の妥当性の検証を行ったところ,官能値の目標値に近い値を示したため,本手法の妥当性が確認された。以上のことより平成24年度に行う予定であった当初の研究目標はおおむね達成されているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,静的な物性と触感の関係づけのみならず,触動作に伴う皮膚との相互作用,温度や湿度などの外部環境との相互作用も重要な因子として考慮した検討を行う。まず温湿度が触感,ひいては材料中の水の状態に与える影響について検討し,触動作によるs水分や熱の授受に着目した検討を進める。また,触感の研究に当たり,以前より協力を得ている繊維メーカー,化粧品メーカーの研究者と協力して,平成24年度に触感設計を行った化粧水に加え,繊維製品や他の種類のスキンケア製品などを対象に,触感に特徴づけを行った材料を検討する。本手法の妥当性については,専門評価者や一般評価者による官能評価によって検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.物品費:触感設計のための物性評価のための器具類,触感設計を行った材料の試作のための器具・試薬・材料費 2.旅費:研究成果を国内外の学会にて報告するための旅費,感性を重視した材料を製造している繊維メーカーや化粧品メーカーとの研究打ち合わせのための旅費 3.謝金:官能評価に協力頂く被験者への謝金 4.その他:感性重視型材料に関する研究会を行うための会場代 として使用する予定である。
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