研究課題/領域番号 |
24700208
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
為末 隆弘 山口大学, 大学情報機構, 助教 (00390451)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 感性情報学 / 聴覚 / 耳鳴再訓練療法 / 音響刺激 |
研究概要 |
慢性的な耳鳴に対する脳の順応を獲得する耳鳴再訓練療法(Tinnitus Retraining Therapy)が注目されている。本研究は、耳鳴を意識するに値しない音に変化させるためには、耳鳴に重畳する音として、どのような物理的音響特性をもつ聴覚刺激を用いればよいか、また、その提示時間や提示方法について考察し、患者に負担の少ない聴覚刺激提示システムを構築しようとするものである。 今年度は、耳鳴再訓練療法のための音響刺激に対する心理的評価方法の確立を目指して、耳鳴再訓練療法に関する従来の症例報告や文献を分析し、耳鳴再訓練療法のための音響刺激に対する心理的評価方法の検討を行った。具体的には、どのような主観的評価をどのような言語表現で行えばよいか候補を洗い出し、耳鳴に重畳する音響刺激について、耳鳴から気が逸れるかどうか、注意を惹かない音であるかどうか、長時間聞いていられる音であるかどうかといったカテゴリ心理評価尺度を構成した。 さらに、耳鳴を意識するに値しない音に効果的に変化させるためには、耳鳴に重畳する音として、どのような音響特性をもつ聴覚刺激を用いればよいか、また、その提示時間や提示方法について検討した。研究の基礎的段階として、まず、臨界帯域幅の狭帯域雑音を耳鳴に重畳する音として用いたときの音圧レベルと上記のカテゴリ心理評価尺度との関連性について音響心理実験を基に考察した。その結果、耳鳴模擬音と帯域雑音のSN比は 3 dB程度が有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的は「耳鳴再訓練療法のための音響刺激に対する心理的評価方法の確立」であったが、耳鳴再訓練療法に関する従来の症例報告や文献を分析し、耳鳴再訓練療法のための音響刺激に対する心理的評価方法やその言語表現の候補を洗い出すことができた。 さらに、音響心理実験に基づく実測データより、耳鳴に重畳する音響刺激について、耳鳴から気が逸れるかどうか、注意を惹かない音であるかどうか、長時間聞いていられる音であるかどうかといったカテゴリ心理評価尺度を構成し、その妥当性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
「耳鳴再訓練療法のための音響刺激に対す心理・生理的評価方法の検討」 (1) 耳鳴検査(ピッチマッチ検査やラウドネス検査)で用いられる純音や帯域雑音に加えて、耳鳴自覚症状調査など報告された症例でみられる耳鳴の模擬音をできる限り作成し、データレコーダに収録しておく。 (2) データレコーダに収録した耳鳴模擬音に昨年度検討した音響刺激を重畳し、そのときの心理評価実験を既設の簡易防音室内で行う。具体的には、耳鳴や音響刺激の音圧レベル値を様々に変化させ、どのような言語表現に相当するかを判断する。得られた言語表現が妥当なものであるか否かを検討し、言語表現とそのレベルを決定する。 (3) 音響刺激に対する生理的評価方法の確立に向けて、大脳と聴覚との関連性に関する従来の研究事例や文献を調査・分析するとともに、これまでに検討を重ねてきた自律的・背景的な脳波電位の種々の変動成分に着目し、どのような脳波特徴量で評価できる可能性があるかを検討する。これらの結果を精査し、いくつかの特徴量の候補を決定する。 (4) 耳鳴模擬音を聴取している被験者に対して、耳鳴再訓練療法のための音響刺激を提示し、既設の多チャンネル誘発電位計測装置によって計測した脳波を解析用PCに取り込む。耳鳴および音響刺激の音圧レベル値を種々変化させて脳波測定を行う。収録した脳波について時間的・空間的な様々な分析手法を適用し、主観申告に基づく心理評価法では測定することが難しい“聞き流している”・“意識していない”といった生体反応に関連した脳波中の特徴量を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
関連学会へ発表するための英文が校正を要することなくアクセプトされ、次年度使用額が生じた。次年度の関連学会論文投稿のための英文校正費として使用する。
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