研究課題/領域番号 |
24700221
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
藤原 寛太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (00557704)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非定常確率課程 / 統計量 |
研究概要 |
本年度は,「神経細胞の活動電位データに対する新たな数理統計解析手法の開発」という研究目的を遂行するための第一段階として,これまで用いられてきた統計解析手法の精細な調査を行った.具体的には,神経スパイクに代表されるような非定常点過程データの高次統計量変動,試行間変動の統計解析手法について精査した. まず,統計的性質が既知の確率過程によって得られた点過程時系列に対して従来の解析手法を適用・解析することで,手法の性能評価を行った.その結果,従来手法は高精度の統計量解析を可能としているものの,元の時系列の時間スケールや確率的性質によっては十分な性能を発揮できなくなってしまうという欠点を明らかにした. 次に,その欠点を補うため従来手法に新たに修正を加えた解析手法を開発した.この解析手法は従来手法では利用してこなかったスパイク間隔情報を利用することで,時間分解能では従来手法にやや劣るものの,より精度の高い統計量の推定を可能としている.本手法を従来手法と同様に統計的性質が既知の確率過程によって得られた点過程時系列に対して適用・解析した結果,従来手法があまり有効ではない時系列に対しても有効であり,従来手法の欠点を補うものとなっていることがわかった. よって,従来手法と今回開発した修正手法の双方を時系列の性質により使い分けることで,どのような点過程時系列に対しても高次統計量変動,試行間変動の統計解析を精度良く行うことが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は,高次統計量の時間変動や試行間変動の統計解析に注力した.これまで先行研究で行われていた高次統計量の時間変動や試行間変動の統計解析手法の欠点を明らかにし,その欠点を補う統計解析手法を開発することに成功した.これは,初年度計画以上の進展といえる.しかしその一方で,活動電位波形の統計解析手法については開発途上であり,こちらについてはやや遅れていることも確かである. しかし,高次統計量の時間変動や試行間変動の統計解析手法の開発は活動電位波形の統計解析手法開発をする上で避けては通れない課題である.活動電位波形はマーク付き点過程の代表例であり,マーク付き点過程の統計解析はマーク無し点過程の統計解析なしには実現できないためである.高次統計量の時間変動や試行間変動の統計解析手法の開発は活動電位波形の統計解析手法開発の下地として欠かせないもので,研究計画を俯瞰して見ると当初の計画以上に進展していることがわかる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,高次統計量の時間変動や試行間変動の統計解析の統計解析手法を発表するとともに,活動電位波形の統計解析手法の開発にも力を入れていく.また,提案した統計解析手法を実際の生理学実験データへ適用する.その結果から,神経数理モデルの取捨選択やパラメータ探索を行い,データから生理学的示唆を得る方針である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では,今年度に開発した統計解析手法を学術雑誌や国際会議等で発表するための旅費や諸経費が必要となる.また,統計解析手法の開発に際して行う数値計算やデータを扱うため,新たなパソコンとソフトウェア購入を予定している.
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