研究課題/領域番号 |
24700221
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
藤原 寛太郎 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (00557704)
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キーワード | 非定常確率過程 / 統計量 |
研究概要 |
本年度は,「単一神経細胞の活動電位データを用いた統計解析手法の開発」という研究計画を遂行するための第一段階として,昨年度に開発した統計解析手法をさらに発展させた.具体的には,神経スパイクに代表されるような非定常点過程データの高次統計量・局所統計量の時間変動や,試行間変動の統計解析手法について精査した. はじめに,統計的性質が既知の非定常確率過程(非定常ポアソン過程,ガンマ過程など)に対して提案手法を適用することで,手法の性能評価を行った.既知の統計的性質を本提案手法によって推定し,様々なパラメータに対して精度評価を行った.その結果,これまであまり推定がうまくいかなかった時系列データに対しても精度の高い統計量推定が行えることを示した.統計量を計測する際の時間窓幅が小さく抑えられることにより,時間分解能も高くなった.そして,従来の統計解析手法と比較した結果,時定数の長いダイナミクスを有する時系列データや,定常に近い時系列データに対して特に有効であることを示した. これまでの統計解析手法が適用できない時系列データに対しても今回開発した統計解析手法が有効であることを示したことにより,より幅広い時系列データに対する統計量の時間変動が解析可能となった.今回開発した時系列解析手法を従来のものと併用することで,生物学,経済学など様々な分野で現れる点過程データに対して高次統計量変動や試行間変動の解析を精度良く行うことが可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,昨年度に続き高次統計量の時間変動や試行間変動の統計解析に注力した.先行研究にてこれまで行われていた高次統計量の時間変動や試行間変動の統計解析手法の欠点をまとめるとともに,それらを補う統計解析手法の開発を行った.これらの結果は論文にまとめ学術雑誌への論文投稿という形まで到達できた. しかしその一方,活動電位波形の統計解析手法については開発途上であり,やや遅れている.尤も,高次統計量や試行間変動の統計解析手法の開発は活動電位波形の統計解析手法開発を行う上では不可避である.活動電位波形の統計解析手法を開発する基盤固めをまず行う必要があり,研究計画を俯瞰してみると当初計画通りに進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,活動電位波形の統計解析手法の開発に力を入れていく.また,提案した統計解析手法を実際の生理学実験データへ適用し,その結果から神経数理モデルの取捨選択やパラメータ探索を行い,データから生理学的示唆を得る方針である.
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次年度の研究費の使用計画 |
海外出張旅費(北米神経科学会,米国)として用いる予定であったが,研究の進捗状況から出張を見送ったことが,次年度使用額が生じる主因となった.しかしながら,次年度では既に国際会議出席のため海外出張の予定が入っており,また,最終年度ということで成果発表の場として国内・海外を問わず発表していく予定であるため,旅費や学会参加費等が多く必要となる.よって,次年度に繰り越すこととなった. 今年度に開発した統計解析手法を実データに適用するにあたり,新たなパソコンとソフトウェア購入が必要となる.また,国際会議出席のため海外出張の予定があり,また,成果発表のため多くの学会に出席するための旅費が必要である.
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