研究課題
平成26年度は,前年度までに引き続き多試行神経スパイクデータに対する統計解析手法の開発を行った.具体的には,高次統計量や局所統計量,順序統計量の時間変動を時系列データからより精度良く解析する手法を開発した.本年度に開発した手法は,これまで標準的とされてきた統計解析手法と比較して,解析対象となる時系列データの性質(特に相関の時定数やノイズなどの不規則性など)に影響を受けにくい頑強な解析手法であり,解析対象の様々な制約条件を取り払うことを可能とした.また,この手法は,神経スパイク時系列データだけでなく一般の非定常確率過程データに対して適用可能である.そして,開発した統計解析手法を様々な時系列データに対して適用した.例えば,サルの視床の一部(外側膝状体)に適用した例では,局所統計量の時間変動を解析することにより平均発火率の時間変動とは独立な情報を時系列データから抽出することに成功した.これは,神経の符号化において,平均発火率だけでなく局所統計量も有効に用いられている可能性を示唆するものである.また,神経スパイクデータだけでなく地震データや膵ベータ細胞の時系列データへの適用も行った.地震データへ適用した例では,局所統計量の変動がマグニチュードの大きい地震の数年前から激しくなることを示し,地震の予測可能性があることを示した.また,膵ベータ細胞への例では,インスリン分泌量と対応する平均発火率とは異なる高次統計量の時間変動が観測され,背後に潜む時定数の長い相関構造が膵ベータ細胞の活動に影響を与えている可能性を示した.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (13件)
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