研究課題/領域番号 |
24700224
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高橋 亮 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00455354)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カオス / CDMA / 電力線通信 |
研究概要 |
近年、スマートグリッドという観点からリアルタイムに近い家庭内消費電力情報の収集・分析が必要となっており、その情報伝送の有力な手段の一つとして電力線通信(PLC)が注目されている。PLCは電力線を信号の通信路としている。消費電力マネージメントの対象となる電気機器は当然電力線と接続されており、新たに通信のための配線を行う必要がない。また、無線を使用した場合に起こるような障害物によって電波が妨げられるという問題を避けることができる。これらの点から、電気機器との情報のやり取りを行う手法として電力線通信には大きな期待が寄せられている。ただし、家庭内電力線は50/60Hzの交流電力の伝送にマッチするようにデザインされている。現在主に使用されている高速PLCはMHz帯における信号伝送が考えられているが、その場合電力線の分岐や接続されている負荷による反射の効果のため、伝送路はマルチパスフェージングとなる。 一方、非線形性を有するシステムにおいてその初期値のわずかな差がその後のダイナミクスにおいて劇的に拡大される。その性質を利用することによる暗号・通信への応用は盛んに議論され様々な提案がなされてきた。 そこで本研究では、カオス系列を拡散符号として用いたセキュアなCDMA通信方式について、電力線通信路モデルでの数値シミュレーションによる性能評価を行った。ここでは特に同期CDMAシステムに着目し、現在そのシステムで使用されている拡散符号であるWalsh-Hadamard符号と比べ、カオス拡散符号を使用した場合、大きくビット誤り率を低減することができることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当年度の検討課題として当初、"電力線伝送路のモデル化とその一般的特性の解析"と"電力線通信路におけるカオスCDMA"の2テーマを計画していた。 現在の所属プロジェクトの課題と同時に本研究課題を進行させており、当初の予定よりも所属プロジェクトに大きく時間を充てなければならなくなったため、本課題の進行はやや遅れていると考えられる。 当年度においては後者の"電力線通信路におけるカオスCDMA"の研究を主に進行し、電力線通信路におけるカオスCDMAの性能評価を行った。電力線通信路のモデルとしては、既存研究を調査している過程において本研究に適していると考えられるモデルを引用した。電力線通信路の一般的特性の解析に関しては文献調査等とともに、研究を進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に沿って研究を進行させる。 すなわち"複数住宅間での情報マネージメントを考慮した低速電力線通信"、"非線形効果を利用した信号対雑音比増幅機能を持つ受信機の検討"、"非線形効果を用いた新しい通信方式やセキュリティ技術の検討"をそれぞれ進める。また、国際会議等においてこれまでの研究成果の発表を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては当初の計画にしたがい、当該研究に必要となる物品の購入を行う。また、研究成果発表のための学会や国際会議等の出張費や論文出版費に使用する予定である。
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