研究課題
本研究では、大容量情報伝送かつ高度なセキュリティを実現できるカオスを用いた通信方式と、それを用いたセキュアな電力線通信システムの検討を行った。近年、スマートグリッドという観点からリアルタイムに近い家庭内消費電力情報の収集・分析が必要となっており、その情報伝送の有力な手段の一つとして電力線通信(PLC)が注目されている。PLCは電力線を信号の通信路としている。消費電力マネージメントの対象となる電気機器は当然電力線と接続されており、新たに通信のための配線を行う必要がない。また、無線を使用した場合に起こるような障害物によって電波が妨げられるという問題を避けることができる。これらの点から、電気機器との情報のやり取りを行う手法として電力線通信には大きな期待が寄せられている。一方、決定論的カオスが発見されて以降、その基礎的な性質が多くの研究者によって長年調べられてきた。また同時に、カオスの応用が活発に議論され様々な提案がされてきた。非線形性を有するシステムにおいてその初期値の僅かな差がその後のダイナミクスにおいて劇的に拡大される。その性質を利用することによる暗号・通信への応用は特に盛んに議論され、従来よりも高度に暗号化された、セキュアかつ大容量を実現する新たな通信システムのデザインとして注目が集まっている。本研究では特にカオス系列を拡散符号として用いた符号分割多元接続(CDMA)通信方式に着目し、電力線通信路のようなフェージング通信路における通信性能についての評価を行った。その結果、フェージング通信路における同期CDMAにカオス拡散符号を使用した場合、従来使用されている拡散符号であるWalsh-Hadamard符号に比べてビット誤り率を低減できることがわかった。
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IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
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Proc. 2013 International Symposium on Nonlinear Theory and Its Applications
ページ: pp. 209-212