研究課題/領域番号 |
24700233
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
谷口 忠大 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (80512251)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 確率的情報処理 / 時系列モデル / 記号創発 / ノンパラメトリックベイズ / 言語獲得 |
研究概要 |
本研究では記号創発研究の発展のため,二重分節分析器をノンパラメトリックベイズ理論に基づく完全な生成モデルとして開発することを目的として研究を行った.ノンパラメトリックベイズ理論は無限個の隠れ状態を仮定することで,旧来固定する必要があった構造を柔軟に学習可能とする確率モデルであり,音素・動素数未知,単語・単位動作数未知の条件下で二重構造を分析し任意個の単位動作や単語をロボットに自発的に獲得させる事が可能な新しい機械学習手法の実現を目指している. 本年度の成果としては,二重分節構造を持つと考えられる時系列データに対して近似的なサンプリング手法として,分節化手法としてのsticky HDP-HMMとチャンク化手法としてのNPYLMによる二重分節構造の推定手法を構築し,各種の応用展開と検証を行った.具体的には,主に自動車の運転データを対象とし,二重分節解析器によりドライバの意図の切り替わり点が従来法より高い精度で推定できることを示した.また,確率的にサンプリングされるチャンクの中で安定的にサンプルされるチャンクである頑強チャンクが,先行車の影響を受けずになされる一連の運転挙動を表現していることを明らかにした.また,二重分節解析器により推定される二重分節点を運転動画要約に用いることで既存手法を大きく改善する動画要約が可能であることを示した.また,ドライバの運転挙動を表現する符号系列の予測にも有効であることを示した.これら応用を含めた多面的な成果を挙げている. 一方で,当初計画していた理論的な基礎づけとしては,離散データに対する隠れ入れ子Pitman-Yor 言語モデルの開発と,そのサンプリング手法の開発を目指して研究を行ったが,タスクの探索空間が膨大になり,また,当初想定していたアプローチが困難であることが明らかとなってきた.これらを踏まえながら,25年度の研究を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の24年度の研究については,主に隠れ入れ子Pitman-Yor 言語モデルの開発,及び効率的サンプリングアルゴリズムの開発について計画を行なっていた.研究実績の概要で示した通り,これについては,理論定式化,実装の過程においてタスクの探索空間が膨大となることが大きな問題となり,また,サンプリング手法の構築においても当初想定していたサンプリング手法では実時間的な推定が困難なことが明らかとなった.この点においては,研究は当初の想定よりもやや遅れているといえる. しかしながら,同時に本研究計画の中で示していた,人間由来の動作を二重分節解析器によって分析することの有効性検証については,一方で多くの成果を得た.自動車運転挙動が中心となるが,人間の動作予測や意図変化の推定において,従来法よりも高い精度を得ることが出来た.これは当初の想定よりも,進んだ成果を得ており,全体としては概ね順調な進展を見せていると言える.
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今後の研究の推進方策 |
25年度においては,ノンパラメトリックベイズモデルに基づく二重分節解析器の生成モデルとそのサンプリング手法の開発を進める.また,順序は24年度に開発出来なかった,隠れ入れ子Pitman-Yor 言語モデルの開発,及び効率的サンプリングアルゴリズムの開発を行いたい. これらの開発を受けて,人間の非分節動作時系列データからの単位動作抽出に対する有効性の検証,ラベル付けされていない音声データからの語彙獲得に対する有効性の検証を行なっていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の予算を一部繰り越しているが,主に設備備品費用と人件費について執行を行わなかった.これについては,上記,研究の進捗状況と関係し,具体的なソフトウェア開発等の業務に充てる人件費執行を行わなかったため,また,論文採録の時期的な問題も有り掲載費用が24年度予算で執行できなかった点などがあげられる.これらは,25年度において同様の使途において計画的に執行する予定である.当初計画の25年度予算については,国際会議への参加旅費,及び,研究成果の論文投稿に要する費用を中心に,ロボットの言語獲得の実装のための実験機器購入に充てる.
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