本研究課題の目的は,脳波による評価値決定に基づく対話型進化計算を拡張した手法の開発であった.この手法は,従来の対話型進化計算におけるユーザの主観評価を生体情報に置き換えたものといえる.手法の特徴は,生体情報を利用することでユーザの主観評価を推定し代替するものであり,2005年にTakagiらにより概念が提案され,拡張対話型進化計算と名付けられている.実際のシステムとしては,研究代表者により,心拍情報を利用した拡張対話型進化計算のシステムが作られている. 脳波による拡張対話型進化計算は,心拍情報を用いる場合と比べ,より直接的にユーザの感性情報が推定可能となることが期待される.平成24年度に簡易脳波計や脳状態を計測可能な機器を購入したものの,それらの一部でボタンの物理的な不具合やリアルタイムフィードバックの機構の不具合があり,時間的な問題からシステムを用いた実験には至らず,発表した成果としては,手法の課題検討に留まった.現在,システム構築と改善,実験に入った段階であり,近日中にその成果を発表する予定である.研究計画としては,音や香りなどのメディア最適化技術をもとに,脳波を利用する拡張対話型進化計算につなげる予定であるが,音や香りなどのメディアをユーザが体験した際の脳の反応と好みや感性とをどのように結び付けられるのかが課題と考えられる. 当該年度の他の成果としては,脳波による拡張対話型進化計算に近い研究として,その前段階である対話型進化計算による香り最適化手法の改善を行った.具体的には,新たな進化アルゴリズムとしてタブー探索の導入や,ユーザの主観評価の判断に要する時間情報の利用など,今後の発展につながる手法の提案を行った.今後の脳波による拡張対話型進化計算との接続などを予定している.
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