研究課題/領域番号 |
24700238
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
片平 健太郎 独立行政法人理化学研究所, 情動情報連携研究チーム, 客員研究員 (60569218)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 主観的価値 / 強化学習モデル / 生理反応計測 |
研究概要 |
本研究ではヒトの意思決定に着目し,ヒトの行動に直接的に影響を与える潜在的な主観的価値を推定するための計算論的枠組みを構築することを目的とした。この目的のもと意思決定における価値計算過程に注目し,意思決定の実験データを記述する数理モデルを検討した。 初年度である平成24年度は,健常者である実験参加者に意思決定課題を行ってもらい,その際の生理指標計測を実施した。この実験課題では各試行において選択肢を表す単純な図形が二つ画面に現れ,被験者はいずれかを選んで対応するボタンを押すことが求められた。選択に応じて定められた確率で価値を推定する対象となる静止画像を呈示した。選択肢と静止画像の確率は実験課題中に予告なく変化させた。そのため,実験参加者は絶えず選択肢の価値を学習しつづける必要があった。生理指標として表情筋の筋電位,自律神経系の働きを反映する心拍,皮膚コンダクタンスを記録した。これらの生理指標を組み込んだ数理モデルを提案し,その後の意思決定との関係を解析した。 その結果,皮膚コンダクタンスに反映される交換神経系の活動は一試行あたりの価値更新の程度を修飾すること,また,表情筋の一つである皺眉筋の活動が意思決定の結果として出現した画像の価値と関係することが明らかとなった。これらの結果は簡便な装置で計測可能な生理指標により,価値推定の精度を高められるということを示唆する。本研究で構築した実験的枠組みとモデルは,今後の研究において主観的価値の推定をするための技術的基盤となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標は意思決定課題時における行動データと生理反応データを組み合わせて効率的に意思決定における価値計算の過程を推定する手法を確立することであったが,これはほぼ実現できたと考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度で確立したモデルと実験パラダイムをもとに,刺激の変数として新しい属性を取り入れる。意思決定の結果として出現する刺激の属性として,新奇性,親近性,個人的つながり,過去のエピソード記憶との関連等の属性を盛り込み,これらの属性が,単純な快・不快の次元とは異なる新しい効果を意思決定に及ぼすか,あるいは異なる効果を持つか,前年度で確立した手法を適用することで検討する。すべて快・不快の次元と同じ効果で説明できれば,その結果は提案手法の普遍性を示すものとなる。一方,属性ごとに効果が異なれば,それは各属性の意思決定に影響に関する新しい発見となり,いずれでも価値のある結果となる。また,選択肢としては今まで単純な図形で表現されていたが,顔写真を替りに用いることで,顔の評価がどのように後続する画像の価値に影響を受けるかを検討する。以上を,昨年度確率した実験デザイン,および生理反応計測,モデルベース解析を適用することで,あきらかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度は予定していた実験参加者への謝礼を所属機関の経費で賄うことができたため、約24万円が余り次年度使用額として繰り越した。H25年度は刺激呈示用・および解析用デスクトップPC(20万円)を購入する。解析を効率化するため,数値計算ソフトウェア(Matlab)を1ライセンス購入する(付属ツールボックス込みで34万円)。被験者への謝礼を(2千円×100人=20万円)支払う。研究会等での情報収集と学会発表のための国内発表を行う(5万円×4回=20万円)。
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