本研究の目的は、大量の資料・データを視覚化し効果的に把握するためのモデルを開発することによって、人文・社会科学の研究を支援する新たな手法を提示することである。この目的に対し、独自の3次元視覚化技術(KACHINA CUBEシステム)を大幅に改良し、実践的に活用することによってアプローチした。 技術的成果としては、Webブラウザ上で動作する3次元情報ビュアーを新規開発した。これを用いることで、各種資料(データセット)にある種の「空間性」を付与することが可能となり、既存の仕組みにはない資料閲覧環境が実現された。ここでは3次元CGの視覚効果を活用し<データセット全体の俯瞰>と<個別レコードの参照>を柔軟に切り換えることが可能であり、これ基に「データダイビング機能」などいくつかの実用的機能が実装された。 さらに、システムの運用方法についても検討を重ね、当初から予定していた裁判プロセスにおける供述分析ツールとしての運用や地域アーカイブ構築ツールとしての運用だけでなく、組織情報の視覚化ツール、あるいは、議事録の視覚化ツールとしての運用もおこなった。なかでも、組織情報の視覚化ツールとしての運用は利用者へのインタビュー等から、高く有用性を持つことが示唆された。具体的には、KACHINA CUBEを用いることで、特定企業の全社員を3次元ビュアー内にプロットすることが可能となり、人事戦略の分析をおこなう上で有用であるという知見が得られた。 また、研究成果のアウトプットについては、デジタル・ヒューマニティーズ関連学会、ヨーロッパ法心理学会、経営情報学会といった本研究におけるシステムの活用事例と関連の深い諸学会にて積極的に発表をおこなった。
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