本研究では、現時点で産業上注目されている分野に着目し、その分野に関わる企業の取引ネットワーク、その企業が実施している特許のネットワーク、その特許技術を構成する学術論文のネットワークを総合的に俯瞰し、関係を分析し変遷のダイナミクスを明らかにした。これにより、科学知が産業になるまでの時間や立ち上がりの特徴における分野ごとの相違、産業の発展に資する可能性がある領域を学術論文の段階で特定する手法に資する知見を得る。さらには将来産業上で注目される分野を早期に特定することで、近年のように知の総量が爆発的に増大している状況下において、政策立案者や企業経営者が、特定の分野において将来有望な領域の特徴の同定に資することが可能となる。具体的には、特許公報の引用関係を元にしたネットワークに対してクラスタリング処理の結果から得られた主要クラスタを特定し、それらの主要クラスタと類似性の高い論文引用ネットワークのクラスタを特定する。特定された論文引用ネットワークのクラスタの過去の時系列推移から、特徴の有無を抽出した。再生可能エネルギー分野を対象に実施した結果、産業の発展に資する領域が持つネットワーク指標の推移には、他の分野と異なる特徴を生じることが確認できた。ネットワークの可視化手法については、国内外の有識者から意見を取り入れ、より直感的な理解を促す可視化を実現した。また、本研究では、定量評価のみならず定性的な評価にも重要性を置き、結果の評価において当該分野有識者の意見を取り入れることでそれを実現した。今後の展望として、この手法を他の分野に水平展開することで、より汎用的な評価手法の開拓および結果の解釈につなげることが必要となる。
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