欧米諸国の公文書管理制度は、19世紀以降、行政運営の効率化と歴史的資料の保存・公開という、一見すれば全く相反する要求を調整し両立させるシステムとして段階的に整備された。日本で2011年に施行された公文書管理法はこれら諸外国の制度をモデルとして構想されたが、レコードスケジュール、レコードセンターなど文書管理とアーカイブズの連携を促す各種技法を真に機能させるには、その基本的性格と応用可能性をめぐる研究の深化が不可欠である。本研究では、欧米諸国(特に米国)における公文書管理手法の成立・普及過程を一次資料に基づき実証的に分析するとともに、その日本における受容の経緯について検討する。 最終年度は、英国において1回の実地調査を実施した。同国の文書管理及びアーカイブズは米国の記録管理システムの形成に著しい影響を及ぼしており、両国の比較と実態の分析は、これまで進めてきた米国所在の文献資料に基づく研究を補完する上で重要である。今回の調査では、英国学士院文書館(団体アーカイブズ)、リバプール大学図書館・文書館(大学アーカイブズ)、ユニリーバ文書館(企業アーカイブズ)において、当該機関の文書管理とアーカイブズの連携をめぐる歴史及び現状についての聞き取り調査を行った。 最終年度は、これまでの調査の成果に基づき、2回の口頭発表を行った。また、本科研費の研究成果を含む研究書の刊行準備を進めており、本研究期間終了後まもなく刊行される予定である。
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