研究課題/領域番号 |
24700250
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
折田 明子 関東学院大学, 人間環境学部, 講師 (20338239)
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キーワード | ソーシャルメディア / 実名 / 匿名 / プライバシー / 故人 / アイデンティティ |
研究概要 |
本年度は、(1)若年層を対象としたアンケート調査 (2)ソーシャルメディアと利用者の「死」の取り扱いについての現状の調査ならびに関連研究 という二つの柱を中心に研究を実施した。 (1)に関しては、大学生を対象としたソーシャルメディア利用における名乗り、実名利用およびプライバシー意識についてアンケート調査を実施した。その結果、サービスの利用目的は主に友達との連絡手段であり、かつ3割前後の回答者が日常的に実名を開示している傾向が見えてきた。TwitterとLINEといったサービスの違いによって、若干の傾向の違いはあるものの、自らに関するさまざまな情報を提供していることが見えてきた。なお、得られた知見は、国内学会および海外招待講演によって発表した。 (2)に関しては、仮名利用を許容するソーシャルメディアサービスであっても、必ず実名による本人確認を求められる場面として、利用者の「死」がある。これについて、現状のサービスについて調査した結果、日本発のサービスでは死後の情報利用やプライバシーに関する規定はないが、米国のサービスでは準備されつつあることが分かった。特に、Google社は生前に本人が情報の扱いを選べるオプションを提供している。また、関連研究としては、法律分野における相続、知的所有権という見方、「オンライン墓地」として故人を悼むという見方、人の残したデータは歴史的アーカイブであるという見方など、さまざまな見方があることが見えてきた。調査をまとめたものは、国内学会で発表した他、関連研究に関する議論は、Internet Identity WorkshopやICISのワークショップなど、海外の研究者とともに行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サービス利用における実名利用と名乗りについて、本年は若年層を対象としたアンケート調査を実施することができ、これまでに言われていた「ネットでは匿名」と言った状況が変わりつつあることが見えてきた。 必ず実名が求められる場面としての「利用者の死」に関しては、現状のサービスの他、死に対するさまざまな見方を、国内外の研究者と議論することができた。このことにより、当初の問題意識では気付かなかった観点(プライバシーだけでなく、歴史的アーカイブとしての価値など)を見つけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、引き続き若年層を対象とした実証分析によって、利用者が実名を利用している場面では、何が求められているのか、他の名乗り方や情報開示の仕方によって、プライバシーを保護しつつ実名利用のメリットを享受する方法があるのかといったことを明らかにしていきたい。また、利用者の死に際する本人確認やプライバシーに関しても、引き続き関連研究を調べるとともに、ポリシー策定に必要な要素をまとめてみたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初はアンケート調査費用に予算を計上していたが、大学生に対する調査では費用を必要としなかったため、その分次年度使用額が発生した。 引き続き調査を実施する際に、費用が発生した場合には、この使用額を利用する。不要となった場合には、国内外での研究発表の費用として利用する。
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