研究課題/領域番号 |
24700251
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
浅井 亮子 明治大学, 研究知財戦略機構, 研究推進員 (40461743)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 情報倫理 / ソーシャルメディア / ソーシャルクライシス / 情報通信技術 / アイデンティティ |
研究概要 |
平成24年度は、社会学、倫理学、政治学を中心とする多分野にわたる学際的な知見のなかから、本研究に示唆を与えまた有用となる知見を得るべく文献のレビューを行い、その知見を整理するという計画のもと、研究活動に取り組んだ。また本研究課題が、これまでの文献研究に依拠する一方で,ソーシャルメディア利用におけるユーザの行動様式に関する質的調査が不可欠となるため、ソーシャルメディアの利用状況やそこでどのようなコミュニケーション様式がみられるかなど各国の量的調査の結果などを用いながら、研究を深化させることにも留意した。現在ウプサラ大学(スウェーデン)での共同研究に携わる機会を得たことから、ソーシャルメディア利用におけるスウェーデンと日本との比較研究の準備を進め、「セキュリティ・アリーナ」と呼ばれる研究グループを同大学IT学部のメンバーと作り、危機的状況に置けるICT利用に関する共同研究を始めるに至った。平成25年度からは本格的な研究活動を展開すべく二週間に一度の勉強会、国際会議での発表と当該セッションのプロポーサルなど積極的な活動を始めている。また経済的な社会の危機的状況に陥っているという点で研究対象として検討していたギリシャについても、現地の政治家とコンタクトをとり、インタビュー調査に向けた準備を行った。当該年度の研究成果を情報倫理の課題を取り扱う日本国内学会1回、国際会議4回において発表を行い、本研究課題の第一段階の成果を公表するとともに第二段階へのステップになるディスカッションを積極的に行った。またそれら発表とあわせて、国際会議論文ならびに予稿原稿を発表した。また、次年度の計画遂行と研究活動の積極的推進に向けて、諸外国の研究者とも交流を重ね、新たな視点の獲得と研究の助言を受けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は本研究課題に取り組む初年度として基礎的研究と研究活動の積極的な展開のための基盤作りに重点を置き研究活動を進めていった。そのプロセスでは、書籍や論文を用いた文献調査を第一段階として行い、理論的な枠組みと現状把握につとめた。それらの研究成果は、5月スウェーデン・ウプサラ、6月情報経営学会全国大会、6月スウェーデン・ウプサラ、2月スイス・チューリッヒ、3月スウェーデン・リンショッピングでの国際会議ならびに日本国内学会において発表を行った。また国際会議での発表を重ねることで、IFIP9.2(International Federation for Information Processing)の正式メンバーとして認められ、今後の研究活動における研究者ならびにICT関係企業や組織とのネットワークの構築の足がかりをつかむことができた。本研究課題の目的として掲げた「社会的リスクが高まる状況においてソーシャルメディアが人々の情報共有に果たす役割だけでなく、ナショナリズムの高揚ならびに表現・発言の自由に基づく自己表出のプロセスに注視し、情報行動の多様性と情報倫理との視座に立った実証的研究を通じてソーシャルメディアの社会的活用への展望と課題とを明らかにする」ために、同研究課題と共同研究ができる可能性の高い諸外国の研究者とも交流をはかることができ、より充実した調査研究活動にするための素地を作ることができたと考えている。また本研究課題においてより多角的な視点からの考察を可能にすると考えられる新たな研究視点を得ることができ、技術的・工学的な視点からもアプローチするための研究協力関係を築くことができた。こうしたことから、本研究課題の目的に対する達成度はおおむね順調であると評価するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は昨年度までにおける研究成果と調査準備とをもとに、実証的な研究へと本課題を深化させていく。すなわち、ソーシャルメディアを介したアンケートおよびインタビュー調査の実施、ユーザに対するインタビューの実施を中心として、その調査結果の分析・解析と整理を進める。なお同調査を行う上では、webを使った社会調査手法に関する研究を活用していくことを検討しており、現研究環境の中で得たネットワークと協力関係を十分に活用していきたいと考えている。また得られた調査結果を国際的な比較研究へと進めるために、海外研究者の協力のもと諸外国においても比較調査研究の実施を試みる。現在は経済的に社会の危機的状況にあるギリシャの政治家へのインタビューと、そうした混乱状態の中で情報通信技術が社会に対して果たす役割と、経済危機により国外に人々が流出する状況の中で情報通信技術やソーシャルメディアがどのように活用されているのかについても研究を進めたい。とりわけ、国家財政破たんに直面する不安定な現状において、人々がソーシャルメディアを介して同胞のネットワーク(オン-オフライン)を活用しソーシャルキャピタルを強化させ、互酬性をもとに活性化させているコミュニティの相互扶助機能について考察を深めていきたいと考えている。こうした研究活動で得られた研究成果は、国内学会ならびに国際会議において発表を行うとともに、セミナーならびにシンポジウムという形態での公開も計画している。また海外の大学においてセミナーを担当する機会を得ていることから、本研究課題にもとづく成果を教育活動にも反映させてより社会性のある研究活動とその成果が得られるようにつとめる。平成25年5月時点では国際会議での論文発表3本、グローバルジャーナル2本、国際会議でのパネリスト発表1本を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度はより研究活動を潤滑に行うためにコンピュータやプリンター、ネットワーク整備のための機器を購入する予定である(300千円)。またソーシャルメディアの利用実態を調査するためデータ収集とその解析のために調査費用を計上する予定である(300千円)。あわせて研究成果を公表するための国際会議への参加費用ならびに出張費用として使用する(400千円)。また書籍や備品等の研究活動に必要とされるものについても使用を予定している。
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