本研究は『不安定社会におけるソーシャルメディア利用によるアイデンティティ収束化に関する研究』との研究課題のもと、実際の社会事象をもとにソーシャルメディアへのアクセスとそこでのユーザ間での行動様式や彼らのアイデンティティにどのような影響を与えているのかを検討するものである。初年度は東日本大震災におけるソーシャルメディアの利用を通じて震災以前と震災以後での人々の情報活動の変化を考察するとともに,どのようにソーシャルメディアが人々の生活に根付いたのかを具体的なケースを取り入れながら検討を加えた。二年目の研究活動においては、人々のソーシャルメディア利用とその利用を通じた社会的影響や社会制度の変化、また人々が情報活動を通じてどのような意思決定を行っているのかについて焦点をあて研究活動を展開した。最終年度は、初年度および次年度の研究活動を取りまとめながら、急速に発展する情報社会のなかで人々の公的な生活だけでなく私的な生活をも従来までの行動様式とは異なるものになってきていることを、政治社会的な視点さらに心理学的視点を取り入れつつ情報倫理学のフレームワークの中で研究に取り組んだ。個別の意思決定だけでなく政策意思決定において意思決定者はどのように倫理的であることが可能かに関して研究に取り組んできた。情報倫理研究では取り扱われづらい政治家や政策決定者の情報倫理に関わる行動様式の変化を考察し、国際会議で成果報告を行い、現在は書籍化に向け纏めている。また個別の意思決定の中でも大きなライフイベントとしてのパートナーの獲得においてソーシャルメディが果たす役割がますます増大し、ジェンダーの社会的な意味や規範すらも変容させつつあることを明らかにした。こちらに関しても研究を継続しており、国際会議で発表するだけでなく、海外での大学でのセミナーの開催などを通じて広く成果を公表することができたと考えている。
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