研究課題/領域番号 |
24700254
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
JEONG Hyeonjeong 東北大学, 加齢医学研究所, 産学官連携研究員 (60549054)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 言語習得 |
研究概要 |
外国語はグローバル社会において重要なコミュニケーションツールであるにも関わらず、コミュニケーション場面における言語習得に関する脳内メカニズムはほとんど研究されていない。本研究は、脳機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) を用いて、我々がコミュニケーション場面から外国語をどのように習得するのかを解明することを目的としている。そのため、成人を対象とした語彙学習と文法学習の二つのfMRI実験を実施する。平成24年度には、多くの第二言語習得場面で使われている翻訳中心の学習方法とは異なり、コミュニケーション場面から語彙を習得する方法に注目し、このような方法が記憶定着時期の語彙処理にどのような効果を及ぼすのかをfMRIを用いて検討した。 その結果、ミュニケーション場面学習で覚えた外国語を処理する際、翻訳で学習した外国語よりも、記憶を司る右半球の内側側頭葉の一部である海馬傍回を有意な活動が検出された。この結果は、コミュニケーション場面から覚えられた語彙は翻訳で覚えた語彙よりも記憶が強化される可能性があることを示唆する。更に平成25年、26年度には語彙だけではなく、文法項目までに拡張し、コミュニケーション場面からの学習に関する脳内神経基盤の特定とその効果を検証する計画である。 本研究の研究成果は言語習得という複雑なメカニズムの解明に貢献するだけではなく、コミュニケーション能力育成のための第二言語教育分野の教授法や指導法の開発に重要な視点を与える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には、予定した計画のとおり、コミュニケーション場面からの外国語の語彙の習得の実験を行った。 実験を実施するにあたって、刺激作成、倫理委員会書類作成及び承認、予備実験実施、fMRI被験者募集、被験者事前説明会を終え、そしてfMRI本実験の一部である語彙習得実験を実施した。fMRIの本実験は36名の被験者が参加し、データの一部の分析が終わっている。fMRI実験は二日に分けて行われ、一日目は午前中4時間、午後4時間で一日中学習実験に参加した。さらに、記憶定着後の脳活動を測定するために、一日後の語彙処理を測定する実験も実施した。このように、語彙習得実験は、学習段階を三つ(学習初期段階、学習後期段階、記憶定着段階)に分け、学習段階ごとに脳活動を測定した。 現在まで記憶定着段階の脳データの分析が終わり、平成25年度6月に開かれる日本言語科学会第15回年次国際大会での口頭発表が決まっている。更に、平成25年度11月に開かれる北米神経科学会の参加するために、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年は、さらに、語彙習得実験のデータの解析を進め、語彙を学習する際に関与する脳内ネットワーク特定する様々な分析方法を試みる予定である。語彙実験の結果は、本年度中に国際雑誌に投稿する。 更に、文法項目の学習実験のため、刺激選定、予備実験を実施する。具体的には、7月まで文法項目選定作業を進め、選定された項目を中心に、予備実験を実施する。本年度中に、予備実験を通して作成した動画刺激を用いて、fMRI実験を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、前年度の研究成果を発表するために、国内学会及び海外学会に参加する予定である。また学会の参加を通して、研究に関連する情報収集も行うことも目的としているため、学会発表及び情報収集のための旅費を算定している。また新たな実験を実施する予定であるため、刺激作成、予備実験とfMRI実験などに必要とされる人件費、謝金を算定している。さらに、平成24年度及び25年度の二つの実験を通して得られた脳イメージングデータの迅速な処理のために、脳データ解析用のデスクトップも購入する。論文投稿や実験実施の際に必要とされる諸費用(英文校閲、印刷費、投稿料など)を最初必要費用として設けている。
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