研究課題
円滑に外国語を運用する能力を高めるために、効果的な学習方法やそれに関与する認知メカニズムを解明する研究が必要とされている。本研究では、外国語学習場面でこれまで使われている翻訳中心の語彙学習方法とは異なり、コミュニケーション場面から語彙を推測しながら習得する方法に注目した。具体的には、コミュニケーション場面から語彙を学習する方法が記憶定着時期の語彙処理にどのような効果を及ぼすのかをfMRIを用いて検討した。コミュニケーション場面から学習する方法は、目標語彙が使われている類似した場面に重ねて接することで、言葉の形式(例えば、音)や意味だけではなく、その語がどのような場面で使われているかという機能も習得可能であると仮定した。平成26年度には、語彙を学習している時の脳活動を測定し、それぞれの学習過程に関与する脳領域と学習者の習熟度に関与する脳領域を分析した。その結果、コミュニケーションから語彙を覚える際には、両半球の下前頭回、側頭葉の後部など言語コミュニケーション活動に必要とされる広い範囲の脳領域が関与しているが、翻訳条件から語彙を覚える際には、左半球の下前頭回のみが活動していることが分かった。さらに、後日の語彙テストの成績を用いて、相関分析を行った結果、成績が高い学習者ほど、コミュニケーション条件学習で、記憶を司る海馬、他人の意図を読み取る左半球の側頭頭頂接点部、運動野が活性化していた。これらの結果は、目標語彙がどのような文脈で使われているのかをシュミレーションしながら意味を学習することを示唆している。本研究を通して外国語の語彙学習においてコンテクストの重要性が明らかになった。本研究の成果は、平成27年10月に国際学会(Society for Neurobiology of language) で発表後、国際雑誌(Brain and language) に投稿する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
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