研究課題/領域番号 |
24700257
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
宇野 良子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40396833)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オノマトペ / 人工触感生成装置 / ウェブコーパス / 質感認知 / エージェンシー / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究は、人工触感生成装置を用いた実験と、大型ウェブコーパスの分析を通して、言葉を介した質感認知の共有の仕組と効果を明らかにする理論構築を目指している。特に、質感認知に自己と他者のエージェンシーがどのように関わるのかに着目している。 今年度は人工触感生成装置に関しては、主に新しいバージョンのアプリケーションの開発を行った。研究協力者が開発したアプリーケーション(ENOVO)で予備実験を行い、本研究での解析に必要な変更箇所を明らかにし、新たなバージョン作った(EVONO.auto)。この開発の過程で得た知見と、申請者やその研究協力者とのこれまでの関連実験、更に今後の展望については、人工知能学会で発表し、また、著書の一部でまとめた。 次にウェブコーパスの分析に関しては、まず、本研究の核となるオノマトペを「ピクピク・プルプル・プニプニ・サラサラ」とし、それらとそれらに隣接するオノマトペをウェブデータでサーチした。これは今後実験の中で用いる予定である。更に、触感のオノマトペの動詞化についてウェブデータを用いて分析し、オノマトペを通じたエージェンシー認知の解明に関わる結果を得た。この結果をまとめ国際認知言語学会(2013年6月開催予定)に応募したところ採択された。 最後に、質感認知の理論構築についてだが、エージェンシー認知という観点から触感のオノマトペを扱うのとパラレルな方法で感情のオノマトペ(擬情語)を扱うことができる可能性があることを理論的に示し、国際類像性シンポジウムで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、認知実験・コーパス分析・理論構築の三つの部分からなる。進捗が予定より早い部分と遅い部分があるが、全体的にみると、おおむね順調に進展している。 まず、認知実験に関しては、予定より時間がかかっている。これは、人工触感生成装置として用いるアプリケーション(EVONO.auto)の開発にあたり、元となった既存のアプリケーション(EVONO)の表現力が予想以上に限られていることが予備実験によって分かったため、改良でカバーするだけでは不十分であり、同時に実験方法を部分的に変更する必要がでたからである。現在は問題点をクリアし、データをとりはじめている。 コーパス分析に関しては、予定通り実験で用いるオノマトペをウェブデータから判定する作業を行った。加えて、オノマトペの動詞化についてのデータを分析する中で予定より早く成果を出し、学会発表につなげることができた。 理論構築に関しても予定より順調である。研究協力者の鈴木氏が研究している「内因性」に着目することで、触感のオノマトペと感情のオノマトペを質感共有とエージェンシーという観点からパラレルに論じられる可能性を見出し、現在更なる実験を計画中である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、人工触感生成の認知実験に関しては、2012年度に開発したアプリケーションによる実験でデータを収集し、質感認知と物理的特性とのマッピングを導きたい。 また、ウェブデータについては、2012年度にサーチしたデータを実験で用いるにあたって、適切な可視化の方法を検討する。更に、オノマトペの動詞化についてより多くの実例で分析する予定である。 更に、触感のオノマトペの理論を感情のオノマトペの分析について応用する可能性についての理論的研究をすすめるとともに、研究協力者の鈴木氏とともに、新たな実験を計画している。 研究結果については随時研究発表や論文としてまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、まず人工触感生成の認知実験を行うために、被験者とデータ整理作業者に謝金を支払う。また。力覚ディスプレイを購入する。更に、実験の様子を録画するためビデオカメラが必要である。研究結果の発表のための旅費や大会参加費も必要となる。まず、国外では6月にカナダで行われる国際認知言語学会での発表が決まっている。また、国内ではすでに5月に国際類像性シンポジウムで発表している。更に、実験の打ち合わせのため、研究協力者の所属する大学がある英国に行き、研究打ち合わせをする予定である。(鈴木啓介氏がサセックス大学に、林淑克氏がレディング大学に所属している。)理論構築のために、質感認知に関わる書籍を購入する予定もある。
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