研究課題/領域番号 |
24700258
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
金野 武司 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 特任助教 (50537058)
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キーワード | 認知科学 / 人工知能 / 知能ロボティクス / 共同注意 / 意図的主体性 |
研究概要 |
本研究計画で予定する3つの視線計測実験(人とロボット,人と遠隔操作ロボット,人どうしのインタラクション実験)のうち,25年度は,人とロボットの視線によるインタラクション実験の設計と実施に注力した.この実験による成果は,ドイツベルリンで開かれた国際会議CogSci2013と,岐阜大学駅前サテライトキャンパスで開かれた国内会議HAI2013にて報告した.いずれの報告も,ロボットに埋め込んだ2つのメカニズム(反射的行動および意図的行動を生成するメカニズム)の人による評価実験を元に行なった.CogSci2013では,2つのメカニズムの違いが持つ哲学的側面についての考察を主に報告し,HAI2013では人の評価についての分析結果を主に報告した.この実験から,人はロボットとの間で注視対象を確認し合いながらインタラクションすると,たとえ注視対象の一致率が高くなっても,ロボットに対する親和性や親近感が低下する傾向を示唆する結果が得られた.また,この親和性の低下は,人から注視対象の好みを提示する手続きが入ることで,緩和される可能性があることを示唆する結果を得ることができた. 人と遠隔操作ロボットの実験実施にはロボットの遠隔操作システムの開発が欠かせない.計画段階で予定していたヘッドマウントディスプレイ(VUZIX社製VR920)では,視界没入感をほとんど得ることができないという問題があったが,25年度後半に新たなヘッドマウントディスプレイ(Oculus Rift)を購入し,この問題の解決に目処をつけることができた. 最後に,人どうしのインタラクション実験については,25年度は実験計画書を作成し,マテリアルの準備を完了させた.実験の1つの仕掛けとして,相手の意図が分かった瞬間を相手に気付かれないようにボタン押しで報告してもらい,それを計測するためのシステムを開発することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視線によるインタラクション実験として,本研究計画は3つの実験(人とロボット,人と遠隔操作ロボット,人どうし)を予定している.それぞれの達成度は以下のとおりである. 人とロボットのインタラクション実験:初年度に立案した,人どうしの実験用の調整課題を,人とロボットのインタラクション実験と比較できるようにするため,25年度はその実験デザインの作成に注力した.結果,実験間を直接比較することにこだわるのではなく,要素レベルでの比較を行なえるようにした実験を計画し,これを具体的に実施・分析することができた.この成果は1つの国際会議(CogSci2013)と1つの国内会議(HRI2013)で報告した. 人と遠隔操作ロボットのインタラクション実験:ロボットの遠隔操作システムに関して,懸案となっていた没入感に関する問題を解決するために,ヘッドマウントディスプレイ(Oculus Rift)を新たに購入し,その動作確認を行なった.これにより,没入感に関してはまったく問題がないことを確認することができた.ただし,開発が当初予定より遅れていることに変わりはないので,引き続き迅速な開発が必要である. 人どうしのインタラクション実験:実験のための計画書をまとめ,マテリアルや計測システム(意図共有の瞬間を報告するボタン押しの計測システム)の準備を完了させることができた. 3つの実験計画は順に,分析・準備・実施の段階にあり,実施できたもの(分析段階にある人とロボットのインタラクション実験)については成果報告が行なえるようになってきていることから,計画はおおむね順調に進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画で実施予定の3つの視線によるインタラクション実験(人とロボット,人と遠隔操作ロボット,人どうし)について,実施に向けた取り組みを継続し,実験の総合的な考察を行なう. 人とロボットのインタラクション実験:25年度に実施した実験はまだ参加者数が少なく,条件の統制に不十分な点があった.このため,実験条件を見直した上で,より大規模に実験データを収集する.この結果は26年7月に開催される国際会議(CogSci2014)で発表する予定である.また,現段階のロボットには実験条件を統制する必要性から,目的を推論した結果を能動的な行動に展開する仕組みが導入されていない.人とロボットが互いに意図を調整するためには,ロボットが能動的行動の仕組みを持つ必要があり,この仕組みこそが研究計画書で説明した自他意図の入れ子構造であると考えている.最終年度はこの仕組みの実現に注力する. 人と遠隔操作ロボットのインタラクション実験:視界没入感の得られるヘッドマウントディスプレイ(Oculus Rift)を使ったロボットの遠隔操作システムの開発を行なう. 人どうしのインタラクション実験:既に実験計画書およびマテリアル等の準備は済んでいるので,これらの実験を実施する.
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に購入したメガネ型の視線計測装置(Tobiiグラスアイトラッカー)を,自身が所属する機関の研究者と共同購入したことで,当初予定の1/3に研究費を節減することができたため. 物品費では,人どうしの視線計測をより統制された状態,かつ簡易に実現するための据え置き型の視線計測装置(Tobii X2アイトラッカー)を購入する.現在は自身が所属する研究機関の所有する共用設備(Tobii X120アイトラッカー)を利用しているため,この購入によって設備を常時使用できるようにする.また,旅費としては,成果報告としてカナダ(ケベックシティー)で開催される国際会議(CogSci2014)と,USA(ポートランド)で開催される国際会議(HRI2015)への参加旅費を見込む.さらに謝金では実験参加者への謝金を見込む.その他としては,プログラム開発のための資料やライセンスの購入・更新費用を予定している.また,実験に使用する各種消耗品の購入費用を見込む.
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