研究課題
長寿社会を迎えた日本では,認知症予防への関心が高まっている。認知症の初期段階においても記憶機能の低下は認められることから,認知症の早期発見において記憶に問題があることに気づくこと(記憶に対する自己評価が正確であること)は重要である。本研究では,高齢者の記憶機能低下に対する新たなアプローチの開発を目指して,高齢者のメタ記憶の中でも記憶モニタリングに着目し,適切なあるいは不適切な記憶モニタリングに影響する要因を検討することを目的とした。本研究の結果から,学習が容易であるという判断や想起時の記憶に対する確信度が高くても記憶成績が悪い,反対にそのような記憶に対する自己評価が低くても記憶成績は悪くない高齢者が多数存在することが明らかとなった。また,3年間の縦断的検討により,高齢者の多くが実際には認知機能が低下していないにもかかわらず,以前よりも低下したと回答する傾向があり,特に,抑うつの得点が高い高齢者ほどモニタリングが不正確である傾向がみられた。本研究の結果は,高齢期では加齢に伴う記憶機能の低下を正確にモニタリングすることが困難であること,特に抑うつ傾向にある高齢者については,記憶愁訴が記憶機能の低下に起因しない可能性があることを示唆しており,高齢期の記憶機能へのアプローチでは,抑うつにも焦点をあてる必要性を示唆している。
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Journal of Clinical and Experimental Neuropsychology
巻: in press ページ: in press
10.1080/13803395.2015.1024102
NeuroReport
10.1097/WNR.0000000000000325