これまでの研究は,高齢者が自身の記憶能力を適切に評価することが困難であることを明らかにしている。記憶に対する評価(メタ記憶)と実際の記憶成績の乖離は,記憶機能の低下に対する自発的な対処を阻害する原因となり,自立した生活や社会活動上で問題を引き起こす。本研究では,高齢者のメタ記憶の正確性に影響する要因を検討するために,2つの横断的実験・調査と1つの縦断的実験を実施した。調査・実験の結果,1)高齢者は日常生活の記憶の問題の頻度を若年者と同等であると評価している,2)加齢にともなう記憶機能の低下はメタ記憶に反映されない,3)メタ記憶は記憶機能よりも抑うつの影響を受ける,ことが示唆された。
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