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2012 年度 実施状況報告書

ノスタルジア感情と単純接触効果に及ぼす刺激集中呈示による長期的学習の影響

研究課題

研究課題/領域番号 24700263
研究種目

若手研究(B)

研究機関山口大学

研究代表者

松田 憲  山口大学, 理工学研究科, 講師 (10422916)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード単純接触効果 / 長期的学習 / ノスタルジア / 呈示方法
研究概要

単純接触効果へのノスタルジア感情の介在を想定し,刺激の呈示傾向と呈示方法の操作が長期的学習における単純接触効果にどのような影響を及ぼすのかを検討した。
3セッション構成の学習フェーズ (2週間前,1週間前,5分前) を設定し,独立変数として,刺激の呈示傾向および,刺激の呈示方法を操作した。参加者間(インターバル),参加者内(呈示傾向,呈示方法) の3要因混合計画。呈示傾向は減少 (12-9-6回),一定(9-9-9回),増加(6-9-12回),呈示なしの4水準を設定した。また,刺激の呈示方法として時系列内で目的回数まで刺激を不連続に呈示する分散呈示,目的回数分を連続呈示する集中呈示,3回連続呈示をひとつのまとまりとし,刺激が目的呈示回数分に到達するようにまとまりを分散呈示させる部分集中呈示の3水準であった。
実験参加者は,大学生46名であった。刺激の総呈示回数および各学習セッションの呈示回数は27回に設定した。計3回行った各学習セッションでは,系列位置効果を考慮したフィラー刺激を6つ含め,全図形の総呈示回数を87回とした。評定項目は,好意度,懐かしさ,安心感,親近性,新奇性,不快感であった。
各評定項目において,5分後評定および1週間後評定の呈示傾向と呈示方法を要因とした分散分析を行った結果,集中呈示の一定・減少条件を除く全ての呈示傾向条件で単純接触効果の喚起が確認された。好意度評定においては,集中呈示および部分集中呈示の増加条件では5分後評定条件が1週間後評定条件を上回る結果となった。懐かしさ,安心感,親近性,好意度評定で部分集中呈示の評定平均値が最も高い結果であったが,分散呈示では1週間のインターバルによる効果は最も大きかった。同様の評定項目において,分散呈示では一定条件で最も評定平均値が高い一方で集中呈示および部分集中呈示では一定条件で最も評定平均値が低い結果が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は刺激の集中呈示ないし分散呈示後に長期的な遅延条件を設定し,単純接触効果への影響およびそれへのノスタルジア感情の介在について検討するものである。呈示回数条件とインターバル条件を設定することで,集中・分散呈示の各呈示方法において,どの程度遅延をおいたときに何回呈示すれば最大限の単純接触効果が得られるのかを示すことを目的としている。本年度に行った実験1では,視覚刺激として中性的な無意味輪郭図形を用い,刺激の集中呈示,分散呈示,部分集中呈示が,遅延によって当該刺激に対するノスタルジアや好意度の喚起を心理実験に基づいて検討した。
当初は,ノスタルジアの効果そのものについても検討するために,1週間おきに計3回行われる学習フェーズにおいて,2週間前のみ・1週間前のみ・5分前のみにそれぞれ呈示される刺激を置く予定であったが,刺激学習時における実験参加者の負担があまりに大きいことを鑑みて,この条件については次年度に持ち越すこととした。
実験の結果,長期的学習においては,集中呈示<分散呈示<部分集中呈示の順で単純接触効果が大きく生起することが示唆された。また,早急な感性評価で好意度の上昇を促すためには,直前の学習における集中的な呈示が望ましいことが示唆された一方で,5分後評定および1週間後評定で部分集中呈示の評定平均値が最も高いが,分散呈示において1週間のインターバルによる効果が最も大きい結果が確認された。また,本実験の結果から呈示傾向を一定に保った場合には分散呈示が有効であることが示唆された。
このように,実験自体は順調に進み,有用な結果も得られたが,実験終了後に刺激のカウンターバランスに不備が見つかったため,不備を修正した再実験を行う必要がある。

今後の研究の推進方策

実験1に不備があったため,不備を修正して再実験を行う。また,実験2も並行して実施する。
実験1は視覚刺激として中性的な無意味図形,実験2では聴覚刺激としてメロディを反復呈示し,刺激への感性評価を測定する。学習フェイズは評定フェイズまでのインターバルが,5分,1週間,2週間の3セッションからなり,学習フェイズにおいて刺激を反復呈示する。呈示傾向は減少(12回→9回→6回),一定(9回→9回→9回),増加(6回→9回→12回)の3水準があり,呈示方法は集中呈示と部分集中呈示,分散呈示の3水準がある。集中呈示条件では同一刺激が連続呈示される。部分集中呈示では,3回連続ずつが複数回に分けて呈示される。分散呈示条件では同一刺激は呈示系列の中で時間間隔を置いて呈示する。評定フェイズでは,実験1,2では刺激に対するノスタルジア,親近性,新奇性,好意度評定と,再認課題を行う。
実験1の手続きでは,長期的学習の効果とノスタルジアの効果が交絡している可能性が考えられるため,学習セッションを1回に統制し,評定フェイズまでのインターバルを操作する実験1-2を実施する。学習フェイズにおいて刺激を反復呈示し,呈示方法は集中呈示と部分集中呈示,分散呈示の3水準がある。学習フェイズと評定フェイズとの間のインターバルは,5分,1週間,2週間の3水準があり,評定フェイズでは,実験1,2と同様に刺激に対するノスタルジア,親近性,新奇性,好意度評定と,再認課題を行う。
また,広告接触時の認知メカニズムを解明するために,広告刺激を用いた実験3を併せて行う。さらにマイクロステップ技術を用いた実験4を行い,呈示回数が実験1,2で用いた視聴覚刺激への感性評価に及ぼす効果の長期性を検討する。

次年度の研究費の使用計画

実験1のカウンターバランスに不備が生じたため,実験1のデータを使っての年度内の学会発表および論文化作業に関わる研究費の使用が、次年度に持ち越しとなった。
次年度の使用計画として、下記のように執行する予定である。
実験遂行に必要となる消耗品として,上質紙,プリンタートナー,データ記録用メディアなど。
研究協力者との打ち合わせのための旅費(山口~京都、山口~東京),研究成果発表のための旅費(日本心理学会:札幌コンベンションセンター、日本認知心理学会:筑波大学、日本認知科学会:玉川大学、日本感性工学会:東京女子大学、Psychonomic Society:トロント)。
論文投稿に伴う英文校正費,投稿料,掲載料。

  • 研究成果

    (18件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 物体運動の速度変化とランダム性が能動的注視と選好形成に及ぼす効果2013

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・楠見 孝・小林剛史・一川 誠・興梠盛剛・黒川正弘
    • 雑誌名

      認知心理学研究

      巻: 10 ページ: 133-150

    • 査読あり
  • [雑誌論文] CGで作成された人物の印象形成に外見特徴と背景が及ぼす効果:反復接触に基づく検討2013

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・楠見 孝・瀬島吉裕
    • 雑誌名

      日本感性工学会論文誌

      巻: 12 ページ: 67-75

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 平面図形の配置角度の差による見えの大きさへの影響:プロポーションを変えた幾何学的図形について2013

    • 著者名/発表者名
      木下武志・福田弓恵・三宅宏明・長 篤志・松田 憲
    • 雑誌名

      日本感性工学会論文誌

      巻: 12 ページ: 213 - 218

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 基礎デザイン実習による学習者の意識変化2012

    • 著者名/発表者名
      木下武志・松田 憲・小柏香穂理
    • 雑誌名

      芸術工学会誌

      巻: 59 ページ: 55-61

    • 査読あり
  • [学会発表] 人物CG の印象評価に接触頻度と社会的文脈が与える影響

    • 著者名/発表者名
      中垣辰徳・松田 憲・楠見 孝
    • 学会等名
      第8回日本感性工学会大会春季大会
    • 発表場所
      北九州国際会議場(北九州市)
  • [学会発表] 単純接触効果に及ぼす刺激呈示の回数と時間の影響

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・佐々木翔子・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知科学会第29回大会
    • 発表場所
      仙台国際センター(仙台市)
  • [学会発表] Nostalgia and mere exposure effect: Impact of stimuli repetition and spacing

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, K., Sugimori, E., & Kusumi, T.
    • 学会等名
      Special International Seminar for Time Study Time and Space in Perception and Action
    • 発表場所
      Yamaguchi University(山口市)
    • 招待講演
  • [学会発表] Nostalgia and mere exposure effect: Impact of stimuli repetition and spacing

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, K., Sugimori, E., & Kusumi, T.
    • 学会等名
      53rd Annual Meeting of the Psychonomic Society
    • 発表場所
      Minneapolis (USA)
  • [学会発表] 単純接触効果に及ぼす長期的学習と刺激提示頻度減少の影響

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・石川 晋・楠見 孝
    • 学会等名
      日本心理学会第76回大会
    • 発表場所
      専修大学 生田キャンパス(川崎市)
  • [学会発表] CGで作成された人物の印象形成に外見特徴と背景が及ぼす効果:反復接触に基づく検討

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・楠見 孝・瀬島吉裕
    • 学会等名
      第14回日本感性工学会大会
    • 発表場所
      東京電機大学東京千住キャンパス(東京)
  • [学会発表] The effects of exposure sequence and duration on mere

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, K., Sugimori, E., & Kusumi, T.
    • 学会等名
      34th annual meeting of the Cognitive Science Society
    • 発表場所
      Sapporo Convention Center(札幌市)
  • [学会発表] 物体運動における情動認知

    • 著者名/発表者名
      興梠盛剛・松田 憲・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知心理学会第10回大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山市)
  • [学会発表] 長期的学習による刺激呈示傾向が単純接触効果に及ぼす影響

    • 著者名/発表者名
      石川 晋・松田 憲・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知心理学会第10回大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山市)
  • [学会発表] マルチメディアコミュニケーションの印象形成におけるゲイン・ロス効果の影響

    • 著者名/発表者名
      中垣辰徳・松田 憲・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知心理学会第10回大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山市)
  • [学会発表] テクスチャ画像を用いた背景情報の操作が人物評価に及ぼす効果

    • 著者名/発表者名
      羽津川雅弘・松田 憲・長 篤志・三池秀敏・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知心理学会第10回大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山市)
  • [学会発表] 材質感認知に及ぼす服地と服地画像の刺激間差異

    • 著者名/発表者名
      森本敬子・松田 憲・長 篤志・木下武志
    • 学会等名
      日本認知心理学会第10回大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山市)
  • [学会発表] 単純接触効果に分散・集中提示が与える長期的影響

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・西井 茜・杉森絵里子・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知心理学会第10回大会
    • 発表場所
      岡山大学(岡山市)
  • [図書] 問37:ワーキングメモリ 心理学検定局(編)2013年度版心理学検定公式問題集2013

    • 著者名/発表者名
      松田 憲
    • 総ページ数
      436ページ(pp31-32)
    • 出版者
      実務教育出版

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公開日: 2014-07-24  

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