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2014 年度 実施状況報告書

ノスタルジア感情と単純接触効果に及ぼす刺激集中呈示による長期的学習の影響

研究課題

研究課題/領域番号 24700263
研究機関山口大学

研究代表者

松田 憲  山口大学, 理工学研究科, 准教授 (10422916)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード単純接触効果 / 長期的接触 / 集中呈示 / ノスタルジア / インターバル
研究実績の概要

刺激の呈示傾向と呈示方法の操作が長期的接触における単純接触効果にどのような影響を及ぼすのか,すなわち長期的接触による単純接触効果おいて集中呈示を用いた場合でも生起が確認されるのかについて検討した。
前年度に行った実験1では,3の課題が残されたため,本年度はそれらを解決する実験を行った。第一に,刺激接触から評定へのインターバルによってノスタルジアがさほど喚起されていないことが示唆された。昨年度の実験では接触間インターバルを1週間に設定したことと,接触後から評定までのインターバルの間隔が1週間で,一定のリズムで刺激に接触したことにより,評定課題も学習課題の延長として捉えられノスタルジアの喚起に繋がらなかったのではないかと考えられた。よって本年度は,最後の接触セッションから評定課題までのインターバルを2週間に拡大した。第二に,部分集中呈示 (3回連続呈示のまとまり)は,分散呈示との間に有意差がなく,部分集中呈示が3連続呈示という1つのまとまりが小さかったため分散呈示と同じ捉え方をしたのではないかと考えられたことから,部分集中呈示と分散呈示の単純接触効果への影響は同程度と考え,刺激呈示方法として分散呈示と集中呈示の二つとし,それぞれの呈示方法に増加,減少,一定の呈示傾向を加えた。第三に,1週間後評定での集中呈示増加条件において,好意度評定値が最も上昇した。この結果が直前の接触(第3接触)での呈示回数が最も多いため刺激に対して知覚的流暢性誤帰属が働き好意度上昇につながったのか,長期的接触によりノスタルジアが喚起され懐かしさを感じ好意度上昇につながったのか区別ができなかった。そこで,本研究では第3接触 (最後の接触課題) での呈示回数を同回数とし,評定前の条件を統一することで反復接触の回数による影響を取り除くことで,純粋な長期的接触による影響を検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本実験はノスタルジア感情による好意度上昇を想定し,評定課題を2週間後に設定した。
実験の結果,好意度評定値において,すべての呈示傾向条件で単純接触効果が得られた5分後評定値と比較して,2週間後の評定値は当初の予測とは異なり,有意ではなかったものの,むしろ減少する傾向がみられた。懐かしさ評定値において,全体的に高い値が得られたものの,5分後評定値と2週間後評定値を比較すると,増加条件の集中呈示以外で2週間後に減少がみられた。また,刺激への親近性は2週間のインターバルによっても維持されたものの,刺激への安心感は大幅に低下する結果となった。
本年度の実験でインターバル後の好意度の上昇が見られなかった原因として,インターバルを2週間に設定したことに伴う安心感の低下が考えられる。再認成績において集中呈示増加条件を除いて2週間後減少が見られたことから,それに伴い安心感も減少したと考えられる。従来の先行研究によって,単純接触効果の2週間程度の持続は確認されているが,ノスタルジアによる好意度上昇効果を得るには,呈示回数を増やすなどの方法で再認記憶および安心感を向上させる必要があるのかもしれない。
従来の単純接触効果研究では分散呈示の方が単純接触効果が大きいとされているが,本研究においては,2週間後多少分散呈示の方が上昇しているが,従来の研究を支持する結果とはならなかった。また,昨年度までの実験でみられた好意度評定値の集中呈示増加条件での上昇も確認できなかった。
このように,当初の予測とは反する結果が得られたものの,それによって次年度に行うべき課題(次節に詳細を明記)したことから,順調に進展していると評価した。

今後の研究の推進方策

2週間後評定で単純接触効果がほぼ消失した。昨年度の実験1では,1週間後には単純接触効果がさらに上昇することが示されている。本年度の実験ではインターバル条件は最長で2週間までしか設定していないが,好意度は接触後1週間をピークに時間経過とともに線形に減少し続けるのか,または波形で変化するのかという疑問が生まれた。インターバルによって,記憶情報同士の干渉と解除が繰り返され,結果として好意度評定値が上下する可能性が考えられるため,インターバル間隔をより細かく設定し検討する必要があると思われる。例としてあげるならば,インターバル間隔を1週間後,2週間後,3週間後に設定することなどが考えられる。また,本実験では参加者の負担を考慮し,総呈示回数52回と,昨年度の85回と比べ少なく設定したため,呈示傾向(増加条件,一定条件,減少条件)でセッションごとのそれぞれの呈示回数にあまり差がなかった。そのため呈示傾向が参加者は感じることができなかったと考えられる。そのため,呈示傾向ごとの1セッションの呈示回数を大きくすることで,呈示傾向ごとの評定値に差を出すことができるのではないかと考えられる。
ここから得られた結果に基づいて,マイクロステップを用いたビッグデータ実験の刺激呈示条件を設定し,より効果的に単純接触効果を生起させるための長期的接触スケジュールの交換を目指す。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた研究打ち合わせを学会での出張中に行ったために,その分の旅費が次年度使用額となった。次年度が最終年度であるため,研究協力者との綿密な研究打ち合わせを行う必要があり,そのための旅費として使用する予定である。

次年度使用額の使用計画

京都大学の楠見孝先生、岡山大学の寺澤孝文先生との打ち合わせを行う際の交通費として使用する計画である。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 心拍数が音楽聴取時の時間感覚に与える影響2015

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・一川 誠・橘 佳奈
    • 雑誌名

      日本感性工学会論文誌

      巻: 14 ページ: pp. 215-222

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 選好に及ぼす呈示回数と背景の影響:車と風景画像を用いた検討2014

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・楠見 孝・細見直宏・長 篤志・三池秀敏
    • 雑誌名

      心理学研究

      巻: 85 ページ: pp. 240-247

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] The effect of approach or avoidance movement on the perception of animacy and preference to the object.2015

    • 著者名/発表者名
      Kouroki, M., Matsuda, K., & Kusumi, T.
    • 学会等名
      the International Symposium on Affective Science and Engineering 2015
    • 発表場所
      Kogakuin University, Tokyo, Japan
    • 年月日
      2015-03-22
  • [学会発表] テンポの異なる音の聴取が視覚刺激への反応時間に与える影響2015

    • 著者名/発表者名
      松田 憲
    • 学会等名
      時間学研究セミナー「時間と心をめぐる冒険」
    • 発表場所
      山口大学(山口県山口市)
    • 年月日
      2015-03-21
    • 招待講演
  • [学会発表] The effects of thermal comfort and arousal level on the mere exposure effect.2014

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, K., Nakamoto, S., Morioka, H., Hiyama, K., Goto, T., Koganei, M., & Kusumi, T.
    • 学会等名
      Psychonomic Society
    • 発表場所
      Long Beach, CL, USA.
    • 年月日
      2014-11-22
  • [学会発表] 空間周波数と明度の操作とノイズ付加が服地画像への触感評定に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・森本敬子・長 篤志
    • 学会等名
      日本認知科学会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2014-09-18
  • [学会発表] 単純接触効果における刺激呈示頻度の変化と分散-集中呈示の効果2014

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・末友雄太・楠見 孝
    • 学会等名
      日本心理学会
    • 発表場所
      同志社大学(京都府京都市)
    • 年月日
      2014-09-10
  • [学会発表] The effects of thermal comfort on mere exposure effect.2014

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, K., Nakamoto, S., Morioka, H., Hiyama, K., Goto, T., Koganei, M., & Kusumi, T.
    • 学会等名
      Cognitive Science Conference
    • 発表場所
      Quebec City, CAN.
    • 年月日
      2014-07-25
  • [学会発表] 運動物体への生物性認知と選好に与える接近回避行動の影響2014

    • 著者名/発表者名
      興梠盛剛・松田 憲・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知心理学会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2014-06-29
  • [学会発表] 時間の共有感が仮想場面への没入感に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      黒田怜佑・松田 憲・楠見 孝・辻 正二
    • 学会等名
      日本認知心理学会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2014-06-28
  • [学会発表] 単純接触効果における温熱環境の影響2014

    • 著者名/発表者名
      松田 憲・中元俊介・森岡広樹・樋山恭助・後藤伴延・小金井 真・楠見 孝
    • 学会等名
      日本認知心理学会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2014-06-28
  • [図書] 第5章なつかしいものがなぜ好きになるのか 楠見 孝(編)なつかしさの心理学:思い出と感情2014

    • 著者名/発表者名
      松田 憲(楠見 孝・川口 潤・牧野圭子・杉森絵里子・瀧川真也・仲 真紀子)
    • 総ページ数
      168ページ(pp.81-97)
    • 出版者
      誠信書房

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公開日: 2016-06-01  

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