香りを表現する色に関して、日本、フランス、ベトナム、インドの4ヵ国間で比較した。その結果、共通点も多かった。 4ヵ国に共通して、香りの持つ印象が色の判断の主要因であると考えられる。本研究からは、香りの印象評定主軸として得られた<MILD><CLEAR><DEEP>の3つの因子を基に、色判断の過程を考察することができる。今回の香り刺激の中では、<CLEAR>な印象(“単純な”“澄んだ”など)であったペパーミントやローズマリーには、緑や青が、<MILD>の印象(“女性的”“甘い”“やわらかい”など)が強かったローズには赤、紫系の色相が、4ヵ国に共通して多く選ばれ、香りと色彩との印象上での共通性が少なからず見出された。4ヵ国間で、最も相違点が多く観察された香りは、シナモンやペッパーなどのスパイス系の香りであった。日本人はダークトーンの色を多く選んだが、フランス人、ベトナム人、インド人は、ビビッドトーンの赤や黄などの暖色系も比較的選ばれていた。 本研究の結果では、4ヵ国間における共通点も多く観察されたことから、すべてを統合した結果に対してクラスタ分析および重回帰分析を施し、色による香りの可視化モデルを作成した。その上で、4ヵ国における相違点を国ごとの特徴とし、選択率を得点化してモデルを微調整することで、国際標準モデルとした。 成果はColor Research and Application(2012)、Kansei Engineering Research(2012)、日本心理学会のシンポジウム(2014)などで報告した。
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