研究課題/領域番号 |
24700268
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
松本 敦 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室/脳機能計測研究室, 研究員 (20588462)
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キーワード | 注意 / 意識 / 無意識 / 脳 |
研究概要 |
本研究では人の無意識的処理が意志の力によってコントロールできるかどうかを検討することを目的とする。具体的に言えば,無意識的に活性化される様々な情報を意思の力で増幅あるいは抑制できるかどうかに焦点をあてて検討していく。 実験1ではマスキング手法を用いて単語を閾上(unmasked),閾下(masked)呈示る。その際,刺激呈示直前に音声cue刺激で注意を喚起する条件(Warned)と喚起しない条件(Unwarned)がある。被験者は呈示された刺激に対して単語か記号かの判断を行う。見えない場合でも強制判断を行う。条件は,注意喚起(あり・なし)×マスキング(あり・なし)の2×2の要因配置になる。この課題をfMRIとMEG装置内で行った。先行研究で報告されている通り,閾上刺激であれ閾下刺激であれ紡錘状回に存在する単語領域は比較的早い段階(~200ms)で活性化がみられた。ただし,その効果は被験者が刺激に対して注意を向けているときのみ観察された。また,cue刺激呈示からターゲット刺 激呈示までの間に活動している領域のいずれかが単語領域に対してトップダウンの信号を送って刺激呈示に備えていると予想した。解析の結果,前頭葉のFrontal eye fieldがトップダウンな注意をつかさどっていることが明らかとなった。本年度はfMRIのデータから脳の領域間の結合を評価するdynamic causal modeling(DCM)を用いて検討を行った。その結果,閾下処理において注意によってFEFから紡錘状回や側頭葉前部に対して調節を行っていることが明らかになった。このことは注意が刺激の無意識の形態処理や意味処理に影響を与えていることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はデータの解析の理解と実装に予定よりも時間がかかり,予定していた実験を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験2では意思の力によって単語表象の無意識的な活性化を抑制できるかどうかをストループ課題を用いて検討する。被験者は呈示されたターゲット刺激の色を判断するmasked条件とunmasked条件を設定し,見えなかった場合でも強制判断を行う。刺激呈示前には音声cue刺激によって刺激に備える。この課題をfMRIとMEG装置内で行う。データ解析は実験1と同じである。色名判断課題では文字情報は課題遂行に不必要な情報であるため,効率的な課題の遂行のためには文字情報の活性化を意志の力で抑制する必要がある。もし,この抑制機能が無意識的な単語表象の活性化を抑制するのであれば,閾下呈示(masked)条件でも紡錘状回の単語領域などの活動はベースライン条件に比べて抑制されると考えられる。また実験1と同じようにネットワーク解析によってこういった領域に抑制をかけている領域(前頭葉と予想している)を特定していく。抑制と増幅では異なる領域が関わっている可能性も予想される。
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次年度の研究費の使用計画 |
いくつかの経費が所属研究機関の予算で支払うことができたため当初の予定よりも少ない使用金額で研究を行った。 当初予定していなかった脳波計などの高額機材を購入し,新たな実験を行う予定である。
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