研究課題/領域番号 |
24700270
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大橋 一徳 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90617458)
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キーワード | 情報表現 / 多点電極記録 |
研究概要 |
本研究の目的は脳の内部状態に応じて外部からもたらされる同一情報に対する脳内表現様式が変化するかどうかを検証するものである。本年度は多点電極を用いて、受動状態、注意状態、記憶状態の3つの脳状態を実現できる動物の下側頭葉から視覚刺激に対する脳状態に応じた神経応答を計測した。具体的には、まず内因性光学計測法によって物体コラムの可視化を行い、特定の物体によく反応する領域を同定した。本研究で記録された神経応答の大部分は光学計測法によって特定された物体コラムに対して行われ、マルチユニットおよびローカルフィールドポテンシャルが視覚刺激に対する神経応答として記録された。同一視覚刺激セットに対する神経細胞の刺激選択性を脳状態別に調べた結果、3つの状態でそれぞれ異なった刺激選択性を示すことが明らかになった。すなわち、受動状態を基準として他の状態の刺激選択性を比較すると、注意状態においては物体に対する刺激選択性は維持されるが、応答が均一化する傾向が見られ、また記憶状態においては、全体的には受動状態と似た選択性を示すが一部が統計的に有意に変化していた。またローカルフィールドポテンシャルを用いて電流源密度解析を行ったところ、状態に応じて層間における情報の伝播様式が異なっていることが分かった。受動状態と比べて他状態では層間での情報の伝播が刺激呈示後も長時間続き、注意と記憶状態間では情報伝播が起こる層において違いが見られた。伝播の持続時間は両者においてはほぼ同じであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初実験に使用する予定であった動物が死亡したため、別の動物を新たに訓練し実験を進める必要が生じた。 新しい動物の訓練期間は先の動物を用いた訓練で得た経験が反映されているため、訓練終了までの期間は幾分短縮でき、今年度は神経活動計測を開始することができた。しかし、死亡した動物の訓練に費やした時間を取り戻すまでには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は単一コラム内のにおける神経活動を計測したが、今後は複数のコラムから神経活動を同時に記録しコラム間における脳状態に応じた情報表現を調査する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
補助金は研究の進捗に合わせて使用しているが、研究が遅れているためその分補助金の使用も遅れている。それゆえ次年度使用額が生じている。 神経活動記録用多点電極を購入する予定である。
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