研究課題/領域番号 |
24700271
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
篠崎 隆志 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター 脳機能計測研究室, 研究員 (10442972)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 認知科学 / 非侵襲脳機能計測 / 脳科学 / ブレインマシンインターフェース / MEG |
研究概要 |
本研究課題の最終目標である視野闘争実験の準備として、定常的視覚誘発脳活動(SSVEF)の位相情報を用いた解析方法を確立した。従来法ではSSVEFの検出に周波数成分の振幅を主に用いているが、この手法では検出の為に秒のオーダーの時間を要し、単一試行で認知の遷移過程を見るためには十分ではなかった。本研究では位相情報に着目し、これを効率的に利用することによって、単一試行において高い時間精度でのSSVEFの検出する基礎技術を開発した。位相情報の検出にはPhase Locking Index (PLI)を元にした評価法を用いた(Tallon-Baudry et al., 1996; Schack & Klimesch,2002)。単一試行での検出実験に先行して、単純な点滅映像を提示した場合の脳活動をあらかじめ計測しておき、得られた信号の試行間PLIの複素成分全体を位相テンプレートとして利用した。実際の信号の検出には、テンプレートと単一試行の位相成分とのマッチングによって行った。また先行研究からSSVEFによって生じる周波数成分の位相は全頭に渡って計測されることが報告されている(Kamphuisen et al., 2008)ことから、空間的に広がった位相情報を空間位相フィルタによって効率的に統合する解析法を開発し、これによって脳反応の信号レベルの向上に成功した。さらにテンプレートの作成効率の向上のために持続型連結位相テンプレートという手法を確立し、これによって時間的に連続な視覚認知状態の変化を検出する技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、脳反応の位相情報を有効に利用した視覚認知状態の検出技術の開発を行った。空間的に広がった位相情報を利用する空間位相フィルタによる解析技術に加え、新たに持続型連結位相テンプレートという手法を開発することによって、本課題の研究目的である視野闘争時の視覚認知状態の検出に必要な基礎技術を確立した。次年度以降、本技術を用いて脳における認知の統合、解決メカニズムの解明を目指すとともに、ブレインマシンインターフェース(BMI)として実社会への応用も目指す。
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今後の研究の推進方策 |
複合的な視野闘争状態である運動方向の視野闘争においてSSVEFを効率よく発生させるための画像の設計を行う。画像の提示には脳磁計測下でも使用可能なように非磁性体を用いて専用に開発したステレオスコープを用いる。画像の形態としては、点滅する縞模様や、点滅するランダムドット、点滅するドットノイズを重畳した縞模様などを用いた運動方向の表現が考えられるが、前年度のSSVEFの実験結果や先行研究における知見をもとにしつつ、予備実験としての脳磁計測の結果を合わせることによって最適な画像のデザインを決定する。もし運動方向の視野闘争において周波数タグ付けがうまく行かない場合、他の視覚特性の視野闘争への変更を行う。例えば、縞模様の方向や色、テクスチャ等の静的な映像は周波数タグ付けへの適合性がより高い可能性が考えられるが、これらのうち複数(例: 方向と色)を組み合わせることによって複合的な闘争状態を作り出す。このような画像は本研究の発展事項としての利用も見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該助成金が生じた状況としては、物品費については当初予定していた刺激提示装置の購入を先延ばしにしたことによる。これについては本研究の最終目標である視野闘争を起こすための画像刺激のパラメータが確定次第、平成25年度以降の購入を予定している。旅費については円高の影響による海外での経費の軽減によるものであり、余剰金については円安のため経費の増加が予想される来年以降の国外旅費での利用を予定している。平成25年度の研究費については、データ保存用ストレージおよびに各種実験用消耗品として物品費を、最新の知見を確実に把握し続けるために国際会議や各種国内会議へ参加するために旅費を、論文の校正費用として人件費・謝金の利用を予定している。
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