研究課題/領域番号 |
24700274
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
田中 研太郎 東京工業大学, 社会理工学研究科, 助教 (00376948)
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キーワード | 統計的因果推論 / 計算代数統計 / 条件付き独立性 / 独立性 / アルゴリズム |
研究概要 |
与えられたデータに基づいて事象の因果関係を推論する統計的手法のことを統計的因果推論と呼ぶ.そして,データからその背後にある因果関係を推測するためには, 計算代数統計の手法を用いた条件付き独立性の代数的表現(「imset」と呼ばれるもの)が非常に重要であることが近年の研究で明らかになりつつある. とくに,統計的因果推論において,条件付き独立性の間で成り立つ推論ルールの性質を明らかにすることは,理論的にも応用的にも重要な課題であり,その性質の解明にもimsetが大きく貢献している. 平成25年度においては, 平成24年度で得られた理論的な結果に基づいて, 条件付き独立性の代数的表現であるimsetの拡張についての研究を開始した. これまでの自分たちの研究で,条件付き独立性の推論ルールを自動的に導出するアルゴリズムが得られていたが,そのアルゴリズムは,確率分布が正の確率のみで成り立っている場合においてのみ適用可能な状況であった. この点を改善すべく,今までのアルゴリズムに他の新しいアルゴリズムを付け加えることを考えた.その結果,確率が0をとりうる場合でも条件付き独立性の推論ルールが適切に導出されるようなアルゴリズムを構築することに成功した.さらに,imsetを拡張した概念を用いることによって,この新しく開発されたアルゴリズムをより効率的に動かすことができるということも示すことができた.そして,これらのアルゴリズムをコンピューター上で実装し,その有効性を確かめることもできた. 他にも,限定的な結果ではあるが,今まで知られていなかった条件付き独立性に関する高次の推論ルールを発見することにも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した時点における研究計画は, imsetを拡張した新しい表現手法を用いることで統計的因果推論における因果の方向などを適切に扱うことを目指すというものだった. そして, 平成25年度の研究で, より難しいと思われていた正でない確率分布に対するアルゴリズムの拡張が実現できたので,おおむね計画通りに研究が進んでいると考えることができる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は, 平成25年度までに得られたアルゴリズムの効率化を図るとともに,統計的因果推論における因果の方向を適切に表現する代数的表現の手法について,比較検討を行う.さらに,平成25年度に得られた高次の推論ルールを手がかりに,高次の場合における推論ルールを列挙する効率的なアルゴリズムの開発を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
国外の共同研究者との研究打ち合わせをしようと考えていたが,それを延期したり,また,国外ではなく国内で開催される国際学会への参加を優先したりして,国外に出張に行く分の旅費を当該年度は使用しなかったため. 未使用額も次年度の計画のために使用する. 追加の計算機実験のためのコンピューターや書籍の購入, そして, 国外の共同研究者との研究打ち合わせや研究成果の発表のための国際学会などへの参加に使用する。
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