研究課題/領域番号 |
24700274
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
田中 研太郎 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (00376948)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 統計的因果推論 / 計算代数統計 / 条件付き独立性 / 独立性 / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
与えられたデータに基づいて事象の因果関係を推論する統計的手法のことを統計的因果推論と呼ぶ. そして, データからその背後にある因果関係を推測するためには, 計算代数統計の手法を用いた条件付き独立性の代数的表現(「imset」と呼ばれるもの)が非常に重要であることが近年の研究で明らかになりつつある. とくに, 統計的因果推論において, 条件付き独立性の間で成り立つ推論ルールの性質を明らかにすることは, 理論的にも応用的にも重要な課題であり, その性質の解明にもimsetが大きく貢献している. 平成26年度においては, 前年度までに得られていたimsetによる推論ルールの導出方法を, 多項式環の言葉で表現しなおすことができた. これにより, トーリックイデアルにおける種々の手法が条件付き独立性の推論ルールの問題に適用することができるようになった. imsetから作られる錘やその双対錘である優モジュラ関数から作られる錘の構造は, 確率分布に対応する部分が非常に複雑な構造をしていることが分かってきている. その構造の解明のためにも, 異なる数学的表現への翻訳はとても重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した時点における研究計画は, 平成26年度においては, 与えられたデータにマッチする条件付き独立性の代数的表現の探索手法について, 計算代数と最適化の手法を駆使して効率的なアルゴリズムの構築を目指すというものだった. そして, 平成26年度の研究で, 前年度までに得られていたアルゴリズムを多項式環の言葉で表現しなおすができた. これにより, トーリックイデアルにおける種々の計算手法が適用可能になり, それらに特化したソフトウェアを使用することで, 問題を効率的に解けるようになった. 以上より, おおむね計画通りに研究が進んでいると考えることができる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成27年度には, 前年度までに得られていたアルゴリズムに因果構造に対する事前情報を組み込む方法について研究を行う. これは, データにマッチする代数的表現や因果構造を探索するためのアルゴリズムを最適化の形で定式化し, 事前情報を制約として導入することで可能になると考えられる. また、これらのアルゴリズムをC言語またはR言語において実装し, それらの性能を試すための計算機実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度からの繰り越しがあったが, 通常通りの研究活動を行ったため, 通常通りの支出となった. 結果, 昨年度からの繰り越し分がおおよそそのまま残る形となった.
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次年度使用額の使用計画 |
条件付き独立性の高次の推論ルールの列挙に想像以上の計算時間がかかることが分かったため, これらの計算機実験のための環境の構築に使用する. また, 国外の共同研究者との研究打ち合わせ, 国際学会などへの参加に使用する.
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