研究課題/領域番号 |
24700282
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田畑 耕治 東京理科大学, 理工学部, 助教 (30453814)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分割表統計解析 |
研究概要 |
正方分割表データの解析において,準対称モデル(Caussinus, 1965)がデータに適合しない場合,準対称モデルを拡張したモデルが必要となる.順序カテゴリ分割表に対して,そのようなモデルは既にいくつか導入されている.しかし,名義カテゴリ分割表においてはそのようなモデルは提案されていない.そこでTahata (2012) では分割表の主対角線に関して対称的な位置にあるオッズ比の非対称構造を示すモデルを導入した.また実データに対してこれまでに得ることの出来なかった新しい結果と解釈を与えた. Tahata and Kozai (2012) では,拡張準対称モデル(Tomizawa, 1984)からの隔たりを測る尺度を提案した.この尺度は0以上1以下の値をとり,尺度の値が1に近いほど拡張準対称モデルからの隔たりが大きいことを示す.実際のデータ解析において拡張準対称モデルがデータにうまく適合しない場合に,提案した尺度を用いてそのデータの拡張準対称の構造からの隔たりの程度を推測できる.またこの尺度の導入によって,複数の分割表データに対して,拡張準対称モデルからの隔たりの程度を比較することが可能となった. これまでに種々の対称モデルに対する分解定理が与えられている.たとえば,Caussinus (1965) など.Tahata, Yamamoto and Tomizawa (2012) では,Palindromic対称モデル (McCullagh, 1978) と累積部分対称モデル (Tomizawa et al., 2006) を用いて「対称モデルが成り立つための必要十分条件はPalindromic対称モデル,平均一致モデル,累積部分対称モデルのすべてが成り立つことである」を与えた.これによって,対称モデルが実際のデータに適合しないとき,その原因を探る新たな方法を与えることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究課題の申請において,具体的に(1)先行研究の整理,(2)モデル分解の情報幾何学的解釈の考察,(3)グラフィカルモデリングとの関連性の考察,(4)分割表解析のベイジアンアプローチ,(5)分割表解析における多重比較問題の考察,(6)新しい非対称モデルの提案と対称モデルの分解,という6つの課題を挙げた. (1)について:先行研究の整理に関しては,学生アルバイトを雇い個人的な文献のデータベースを作成した.これにより先行研究の調査が効率よく出来るようになった.また,モデルの分解や対称・非対称モデルに関する文献の整理も進み課題(2)から(6)に取りかかる準備は概ね整った.この調査の過程から具体的に研究課題にこそあげてはいないが,関連する成果として非対称モデルに関する隔たり尺度(Tahata and Kozai, 2012)を開発することが出来た.(2)と(3)について:先行研究の整理および基礎知識の習得については進んでいるが,残念ながら研究成果を得るには至っていない.(4)について:Kateri, Nicolaou and Ntzoufras (2005) などが対数線形モデルにおけるベイジアンアプローチについて議論しており,このほかにも多くの論文が出版されている.正方分割表解析へのベイジアンアプローチに関連する論文もいくつか発表されている.この課題に関する新しい統計手法のアイデアはいくつかあるのだが,その理論的確認が今後必要である.(5)について:この課題については最終年度に取り組む予定である.そのため今年度はその調査を行った.(6)について:この課題については研究実績の概要に述べたようにTahata (2012) において非準対称モデルの提案,Tahata, Yamamoto and Tomizawa (2012) において新しい対称モデルの分解を与えた.
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の申請において,具体的に6つの研究課題をあげ(1)先行研究の整理,(6)新しい非対称モデルの提案と対称モデルの分解,の二つについては一定の研究成果を得ることが出来た.次年度以降は残りの4つの課題(2)モデル分解の情報幾何学的解釈の考察,(3)グラフィカルモデリングとの関連性の考察,(4)分割表解析のベイジアンアプローチ,(5)分割表解析における多重比較問題の考察,について取り組む予定である.特に(4)分割表解析のベイジアンアプローチについての研究成果をまとめることを第一目標とする.具体的には,先行研究について整理し新しいアイデアをまとめ,提案方法の妥当性について入念な理論的確認を行い,実際のデータへの応用とその解釈などを考察し論文としてまとめる. 次年度以降の予定としては,2013年5月に開催される日本計算機統計学会,応用統計学会・日本計量生物学会,および2013年8月に開催されるISI World Congressにおいて研究成果の発表を予定している.さらに2013年9月に行われる統計関連学会連合大会,日本数学会に参加予定である.この他の国内会議や国際会議にも参加する予定である.これらの関連分野の学会に参加し,最新の研究成果について調査し,また会場にて専門の先生にアドバイスやコメントを頂きたい. 近年,論文誌の電子化が進んでいる.このことから今年度に引き続き最新の文献や資料の整理,データ解析などはアルバイトを雇い研究の協力をお願いしたいと思う.これによってさらに文献データベースを強化し,研究効率の向上を目指す.また関連する文献や参考書の収集も積極的に行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
最新の研究成果を収集するための論文のコピー代金やデータ解析などに用いるソフトウェアのライセンス取得料などに約10万円の支出を予定している.論文などの文献複写は最新の研究を調査する上で重要であり,データ解析やプレゼンテーション資料の作成にはそれらに最適なソフトウェアの購入は必要不可欠である. 今後の研究の推進方策に記述したように,既に2013年5月に開催される日本計算機統計学会,応用統計学会・日本計量生物学会,および2013年8月に開催されるISI World Congressにおいて研究成果の発表を予定している.そのため研究成果発表のための国内旅費に約15万円,国際会議への参加のために約15万円の支出を予定している. ノートパソコンやソフトウェア,書籍といった消耗品に対して約40万円の支出を予定している.論文の作成やデータ解析,プレゼンテーション資料の作成などは主にノートパソコンを利用し,そのなかにインストールされる各種ソフトウェアはそれぞれの作業を効率よく進めるために必要である.また,論文や書類などを印刷するためのプリンタやインクトナー,ノートや筆記用具に代表される文房具についても欠かすことの出来ないものである. 研究に関するアドバイスや資料の整理及びデータ解析の補助のアルバイト等に対する謝金等に約10万円の支出を予定している.これらは研究を円滑に進めるために貴重なことである.データや論文をただ集めただけでは,実際に必要になった情報をすぐに取り出すことが出来ず,その検索に時間を無駄に過ごすことも起こりうる.したがってそれらをきちんと整理し,いつでも必要な情報を引き出せる環境作りは今後の研究を迅速に進めるためにも重要である.
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