研究実績の概要 |
正方分割表の解析においては,行と列の周辺分布の同等性を示す周辺同等性の仮説に関心があり,Stuart (1955) はこの仮説に対する適合度検定統計量を提案した.また別のアプローチとして,データが周辺同等性からどの程度隔たりがあるのかを測る尺度がTomizawa and Makii (2001) などで提案されている.Tahata, Tanaka and Tomizawa (2014) では,先行研究で提案されている尺度の推定量の改良を行った.提案した推定量は,従来の推定量よりもサンプル数が比較的少ない場合にも推定精度が高いことをシミュレーションを用いて示した. Tahata, Kozai and Tomizawa (2014) は,新たにグローバル準対称モデルを導入し,準対称モデル(Caussinus, 1965)を拡張準対称モデル(Tomizawa, 1984)とグローバル準対称モデルへ分解する定理を与えた.この定理は,準対称モデルがデータに当てはまらない場合にその原因を探ることに有用である.さらに,それぞれのモデルからの隔たりを測る尺度も提案し,尺度の分解,尺度の推定量とその漸近分布についても議論した. 正方分割表解析において,セル確率の対称構造を示す対称モデル(Bowker, 1948)からの隔たりを測る尺度が提案されている(たとえば,Tomizawa, Seo and Yamamoto, 1998).それらの尺度の推定量は,スコア統計量や尤度比統計量などの改良として理解することができる.Tahata, Yamamoto and Tomizawa (2014) では,Wald統計量を改良することによって対称性からの隔たりを測る尺度を構成する研究を行った.その結果,先行研究の尺度と種々の関連性をもつ新しい対称性からの隔たりを測る尺度が提案できた.
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