研究課題/領域番号 |
24700287
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
小山 慎介 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (20589999)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 チェコ |
研究概要 |
本研究では、神経スパイク時系列を、スパイク間隔の平均と分散のスケーリング関係に基づいて特徴付けをすることを目的としている。この目的のため本年度では、(1)スパイク間隔の平均と分散のスケーリング関係を持つ非定常時系列モデルを構成する方法の提案、および(2)特別な場合(スケーリング指数が2)におけるスパイク間隔統計性の数理解析、を行った。 (1)一般化した時間リスケール法を導入することにより、任意のスケーリング指数を持つ非定常スパイク時系列を構成することができるようになった。今後、これに基づいて尤度関数および推定方法を作ることができる。 (2)特にスケーリング指数が2の場合のスパイク時系列の性質を解析した。大脳皮質のスパイク発火におけるスケーリング指数はおおよそ2であることが予想されるので、この場合は特に重要である。スパイク間隔の統計的性質をスケールパラメータについてのフィッシャー情報量を用いて定量化し、時間変動するスパイク発火率の推定可能性に関係していることを見いだした。これは大脳皮質でみられるスパイク発火パターンと機能を結びつける結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度において、研究の要である任意のスケーリング指数を持つ非定常スパイク時系列モデルの構成方法を提案できた。これに基づき、次年度において推定方法の開発をスムーズに進めることができるものと期待している。さらに本年度において、チェコ科学アカデミー生理学研究所との共同研究により、スケーリング指数が2の場合の解析・理解が進んだことは、当初の計画・期待を超えるものであった。以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度で提案したモデルの構成方法に基づいて具体的な非定常スパイク時系列モデルを作り、その統計的性質を理論的および数値的に調べる。また、モデルパラメータの推定方法を作り、シミュレーションデータを用いて性能を評価する。より具体的には、 (1)同一のモデルをシミュレーションしてスパイクデータを生成し、それに提案方法を当てはめ、どれだけよく元のモデルを推定できるかを広いパラメータ範囲にわたって包括的に調べる。 (2)より現実的なスパイク生成機構をもつモデル(積分発火型モデルなど)をシミュレーションしてスパイクデータを生成し、提案手法を当てはめる。特に、大脳皮質神経細胞や網膜神経節細胞などをシミュレーションして、どのようなパラメータ値が得られるかを調べ、実験データ解析に対する予想を立てる。 また、今年度で行ったスケーリング指数が2の場合の解析を続ける。特に、提案したフィッシャー情報量を実験データから推定することを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度前半では、今年度に得られた研究成果を国際会議で発表する。 また、今年度で得られたスケーリング指数が2の場合の結果は、その多くの部分がチェコ科学アカデミー生理学研究所のL.KostalとP.Lanskyとの共同研究によるものであり、次年度もこの研究をさらに進めるためにチェコ科学アカデミー生理学研究所を訪問する。 次年度後半では、新しく得られることが期待される成果を国際会議で発表する予定である。
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