本研究は、神経スパイク時系列をゆらぎのパターンに基づいて特徴付ける統計的な枠組みと方法論を構築することを目的として研究を行ってきた。前年度までの研究成果をまとめると、(1)「ゆらぎのスケーリング則(平均と分散のべき乗則)」に基づくスパイク発火ゆらぎの記述の枠組みを定式化、(2)枠組みに基づくスパイク時系列モデルの提案、(3)モデルに基づくパラメータ(スケール因子とべき指数)推定法の提案、そして(4)ゆらぎのスケーリング則が創発するメカニズムの解析、である。 これらの成果を踏まえて本年度では、提案したパラメータ推定アルゴリズムをMatlab上で実装し、Web上に公開されている実験データを用いてその有用性を示した。また、スパイク発火ゆらぎの統計解析に関わる先行研究を、提案した枠組みを用いて批判的に分析し、本研究で提案した方法論の有意義性を議論した。 以上の成果を国内外の会議で発表し、論文2編を国際学術誌に投稿した。(現時点で1編は受理され、もう1編は査読中。)
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