研究実績の概要 |
本研究の目標は3つある。[A]「多種多様大規模生命科学データのための柔軟な統計解析手法の構築」(各種オミックスデータの統計解析手法の提案)、[B]「動植物の分子・個体・集団レベルのシステム解明を目指す統計解析手法の構築」(獣医畜産データの統計解析)、[C]「高速な統計解析手法(検定等)の提案」である。今年度は、前年度に引き続き、また、新たに、以下の9件の研究を行った。
[A, C]:(1) 遺伝子の特徴的な発現パターンを高速・効率的に検出する仮説検定を提案し、実データに適用した(論文投稿準備中)。(2) (1)に関連した統計手法を提案し、遺伝子発現やメタボロームデータに基づいた、疾患(アルツハイマー病等)の高精度な診断マーカー検出法を提案した(論文3編を投稿・執筆中)。(3) 時系列遺伝子発現データに基づいて遺伝子選択を行うための回帰モデルを提案した(Kayano et al., Biostatistics 2016)。 [B]:(4) 乳牛の健康管理や、(5) 分娩事故、(6) 診療記録と乳成分、(7) 受胎率、(8) 長芋の形状、(9)その他、乳牛や馬、犬や植物のデータ解析を行い、8編の論文が採択された(Kayano and Kida, Journal of Dairy Science 2015 等)。
研究期間全体として、[A, C]では、各種オミックスにおける交互作用を捉えるための高速な検定や統合解析、診断マーカー検出への応用を提案した。[B]では、乳牛を中心として、集団(農場等)レベルの情報を考慮した個体レベルのデータ(診療記録や農作物の形状等)と分子レベルのデータ(乳成分や血液成分、各種オミックス等)を用いて、獣医畜産分野における広範囲な研究を行った。本研究により、バイオインフォマティクスや獣医畜産分野における、柔軟で高精度な統計解析手法の例を提示出来たと考えている。
|