研究課題/領域番号 |
24700292
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 類 東京大学, 医科学研究所, 講師 (90380675)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バイオインフォマティクス / 統計的時系列モデル / 薬剤応答 / 薬剤構造 / 時系列遺伝子発現データ |
研究概要 |
多種の既知薬剤作用下で取得された時系列遺伝子発現パネルデータの統計的モデリングに基づき、未知化合物に対する生体システムの応答を予測し、また逆に応答プロファイルから化合物の構造を予測するための方法論の研究を進めた。本研究では薬剤の化学構造情報と、薬剤投与下の時系列遺伝子発現データから動的モデリングにより抽出される生体応答システムの情報(制御構造および動的特性)を鍵に異種情報を統合することにより、上記の予測を可能にする手法の確立を目的としている。 本年度は、まず手法開発の準備として、遺伝子発現薬剤反応パネルデータベース(Open TG-GATEs)から種々の薬剤刺激下で取得された遺伝子発現マイクロアレイの大規模実験データファイル(6765枚分)を取得し正規化等を施し、各薬剤投与条件下での時系列遺伝子発現データの形式に整理しデータベースへ格納した、また同様に薬剤構造データもKEGG Ligandデータベース等から取得し整理を進めた。次に、初期予測モデルの定式化および開発を進めた。そこでは薬剤構造間の類似度を反映したカーネル行列と薬剤刺激に対する生体の応答の類似度を表現するカーネル行列間のカーネル正準相関分析に基づく情報抽出法の検討を進めた。またその中で薬剤構造間の類似性の情報を統計的時系列モデルの中に、より直接的に取り込むことのできる手法への展開への着想を得てその定式化を進めた。同時に上記手法から得られる情報の解釈可能性を高めるため、薬剤刺激下遺伝子発現応答プロファイルから統計的時系列モデルにより推定された遺伝子間ネットワーク構造の特徴および生物学的アノテーションに基づく情報抽出法の開発も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
手法開発のためのデータベース環境を整備し、またそれらのデータを利用して、当初の計画に沿った解析用プログラムの開発も進みつつある。また目的は同じであるが新たな着想に基づく手法の開発にも着手でき概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
初期予測モデルの開発検討をもとに、化合物・動的生体システム情報統合予測モデルの構築を進める。具体的には、化合物構造の類似度を元にしたカーネル行列と、統計的時系列モデルから推定された遺伝子間制御ネットワーク構造および動的応答特性情報に基づくカーネル行列の統合による予測手法の開発および性能評価を行う。化合物の類似度としては構造だけではなく、その他にも薬効・副作用情報等もあるのでそれらの情報の利用も検討する。また同時に前年度に定式化した化合物の類似度情報を時系列モデルの中に直接的に取り込む手法の開発も進める。それらを通じて既知または未知の化合物に対する発現プロファイル予測に基づく新規薬剤標的や薬剤作用機序に関する深い知見の抽出法を検討し、新規薬剤標的の探索等を目指す。また発現プロファイルを入力とした薬剤構造の探索に基づく情報抽出手法も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に、研究成果発表に使用するノートパソコンを購入し、また研究成果の国内外での発表および情報収集・交換を行うための旅費として使用する。
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